2009年8月11日火曜日

競争戦略

競争対応の枠組み

製品ポートフォリオ管理によって各事業部への基本的投資行動が決定されたのを受け、各SBU(戦略的事業単位)ごとに事業戦略が策定されるが、この事業別の競争対応の戦略が、4Pを中核とする各機能戦略を方向づけるのである。

マイケルポーターの3つの基本戦略

ポーターによると企業の競争戦略は、他者に対する競争優位のタイプ(コスト優位か差別化か)と戦略ターゲットの幅(広いか狭いか)に基づき以下の3つ(4つ)に分類される。そして、それは、競争優位をいかに確立するかという企業の根本的な競争対応を規定するものである。

①コストリーダーシップ戦略
コストという判断基準が明確であり、低コストが目的となる。コスト削減の対象となるのは、生産、調達、流通、開発、情報コストなどである。そのための戦略変数は、規模の経済性、操業度、チャネルの共同行動、垂直統合、参入時期、技術投資など全ての企業活動が考えられる。例えば、OEM、PBが多く見られるのは、操業度の向上による生産コストの優位の獲得を目的とした戦略展開である。

②差別化戦略
消費者が欲する何らかの次元において、自社を他社から差別化する戦略である。差別化の対象としては、製品、販売チャネル、広告販促、アフターサービス体制などその他多くの企業活動がある。消費者が、差別化されていると感じるのは、他社製品に比べ、消費者が支払うコストが低いか、消費者が得るパフォーマンスが高い時である。コストは価格が安いだけでなく、維持、取り換え、時間などの消費者コストも含む。また、パフォーマンスを上げるためには、客観的に優劣を判断できる思考型属性と、主観的な判断に伴う、感情型属性を考慮することが重要である。

③集中戦略(コスト集中、差別化集中)
集中戦略は、ターゲットを業界平均より狭く限定し、そこに集中する戦略であり。競争優位のタイプによってコスト集中と差別化集中に分けられる。どちらにせよ、狭いターゲットに集中することで、そのターゲットに最適な戦略を展開することが可能になる。ターゲットを広く取る競合は、集中戦略を取る特定ターゲットに最適な手はなかなか打てない。つまり、広ターゲット企業は、特定ターゲットに対して最適な戦略を打ちづらいのである。例えば、トヨタは、フルライン戦略を展開しているため、高級スポーツカー市場では、集中しているポルシェに勝てない。ターゲットの限定の仕方は、買い手と製品という2つの方向が考えられる。

製品ライフサイクル(PLC)別戦略

PLCは、製品のライフサイクルの展開に伴うマーケティングミックス構築の動態的な方向づけを行うものである。

①導入期
新製品の知名と、トライアルが最大目的となるので、広告販促に力を置きつつ、ベーシックな製品で入り込めるチャネルから徐々に展開していく。

②成長期
競争が激しく、シェアの最大化が目的となるため、価格を下げ、チャネルを広げていくことが中心となる。

③成熟期
成長率が鈍化し、売上拡大が難しくなり、利益最大化が目的となるため、多様なブランドモデルの展開を中心に広告を増やして、ブランドロイヤルティを高めていく。

④衰退期
支出削減とブランド収穫が目的なので、コスト削減に向けてのあらゆる戦略を4P全般にわたって行う。

具体的には http://maki-jun77.blogspot.com/2009/08/2.htmlに投稿済み。


競争地位別戦略

競争地位別戦略は、市場シェア順位という競争地位別の4P戦略を方向づけるものである。ある程度、競争者が安定している必要があるため、競争地位別戦略は、特に、PLCにおける成熟期に妥当な戦略である。

①リーダー(最大シェア、利潤、名声、イメージ/全方位/フルカバレージ)
市場トップ企業のリーダーは、現在の最大シェア、最大利潤、名声を維持することが目標となるため、基本方針は、市場内のすべてに対応する全方位型となり、ターゲットも全ての顧客を対象とするフルカバレッジとなる。この方針は、4P戦略を方向づける。製品は、フルライン、チャネルは開放型、プロモーションも高水準、価格も、名声の維持も考慮して中~高価格に設定される。リーダの戦略の定石には以下のものがある。
(A)周辺需要拡大
業界全体の需要を底上げすることで、新規拡大分がシェアに応じて分配されるため、結果的にリーダーのメリットが一番大きい。
(B)非価格競争
リーダーが特に遵守すべき戦略である。理由は、価格競争は、最大シェアのリーダーに利潤縮小のダメージが一番大きく、確立したブランドエクイティ、イメージの低下をもたらすからである。ただ、価格引き下げに他社が追随してこない場合(コスト競争力で勝てないと判断される)は、リーダーと言えど、価格競争が可能となる。
(C)同質化対応
簡単に言えば、他社製品をイミテーションすることである。リーダー企業は、他社と同じことをしても、販売力、ブランド力、技術生産力の優位性により、下位企業に勝つことができる。

②チャレンジャー(市場シェア/差別化/セミフルカバレージ)
2番手企業のチャレンジャーは、リーダーのシェアに追いつくことが目標となるため、4Pを含め、全てにおいて、リーダーとの差別化によってシェア拡大を計っていくことになる。ただ、経営資源でリーダーに劣るため、セミフルカバレージから始めざるを得ない。チャレンジャーの定石は、徹底した差別化であるが、リーダーが同質化戦略を取ってくるため、同質化できない差別化を目指すことになる。例えば、チャネルを維持する必要のあるNECや松下にとって、デルやソニーの戦略に対してそれとは同質化できない。他には、規格戦略に関しては、技術規格が異なっているため、同質化されにくい。

③フォロワー(生存利潤/模倣/経済性セグメント)
3番手以下の企業はのフォロワーは、トップ企業の座を奪うほどの経営資源は持ち合わせてないため、まずは、着実に利潤をあげていくことが目標となる。そのためには、リーダーが成功した戦略を模倣し、製品開発などのコストを極力抑えることが重要である。ターゲットは中心市場では勝てないため、 中~低価格志向の経済性セグメントを中心に狙い、それに合わせた4Pを展開することになる。
定石は、リーダーはじめ成功企業の模倣を低価格で実現することにある。ただ、圧倒的なコスト競争力のある上位企業に対して低価格で挑むことは難しく、上位企業が力を入れていないセグメントに追い込まれることになる。

④ニッチャー(利潤、名声、イメージ/集中/特定市場セグメント)
シェアではなく、利潤と名声、イメージを目標として集中戦略をとる。すなわち、ターゲットは特定市場セグメントに限定し、そこに到達するためにチャネル、プロモーションは特殊になる。製品、価格は、高めを狙い、高収益を目指す。定石は、集中による特定市場でのミニリーダ戦略である。消費財では、高級服、高級車、高級オーディオなど、高品質、高価格市場へのニッチャー戦略がよく見られる。例えば、アイスクリームにおけるPBが増えたことで、NBが価格を下げざるを得なかったのに対して、ハーゲンダッツなどのプレミアムアイスクリームにとって、影響は少ない。

以上であるが、PLCなどの通時的な流れのなかで、また、競争地位などの共時的な構造のなかで、いかに競争優位を確立するかというグランドデザインをもてるかどうかにかかっている。

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