2009年8月1日土曜日

流通10~変化する小売業~

百貨店

19世紀後半に欧米で誕生している。百貨店業態の革新は以下の3つ。
①商品を店頭に陳列し、値札通りの価格で販売し、現金取引をするという販売方法を採用したこと。大量生産大量販売が発達した中で、不特定多数の顧客に高回転の販売が可能になり需要と供給を結び付けた。
②商品部門別に商品を仕入れ、販売し、管理するという店舗経営の方法にある。部門性組織は、これまでにない巨大な店舗管理を可能にして、買い回り品における品揃えの広さを追求できるようにし、多くの顧客を引き付けた。
③不特定多数の消費者を魅力的な店舗や広告で吸引したこと。上流志向を持つ大衆層にたいして新たなライフスタイルを提案が行われた。

スーパーマーケットチェーン

スーパーマーケットチェーンは、今では最寄品の小売業における最も支配的な業態になっている。革新は以下の三つ。

①チェーンオペレーション
それは、一つの企業が多数の店舗を経営することであり、店舗の仕入活動や広告活動を本部に集中させることで、規模の経済性を達成できる。最寄品では、一つの店舗での商圏が限れるため、店舗レベルでは限界があるため、多数の店舗を展開し、企業レベルでの規模の経済性を追求するのである。

②セルフサービスという販売方法の導入
人件費などの費用が節約されるため、効率的に販売できた。

③販促的価格設定
これは、顧客を吸引するために、一部の商品について特別に低価格を設定して販売する方法である。消費者にインパクトを与え、店舗への吸引力を高めるこの方法はロスリーダーと言われる。

スーパーマーケットチェーンは、これら三つの革新を取り入れることで、低マージンで高回転の販売を一層進めることになる。それは、チェーンオペレーションとセルフサービスにより、コストダウンが可能になり、それに基づく低価格を販促的な価格設定で強調することで、ますます消費者を集め、その大量販売が、さらなるコストダウンを可能にするのである。

コンビニエンスストア

コンビニエンスストアが長時間営業と年中無休をベースに本格的に発展するのは、第二次世界対戦後のアメリカにおいてである。コンビニにおける革新は以下の通りだ。

①近隣の最寄立地と長時間営業、年中無休による買物の利便性を提供することである。

②POSシステムを用いた店頭の商品管理を徹底的に行うことである。

コンビニエンスストアは、比較的小規模な店舗であるために、限られた売場面積を有効に利用する必要がある。そこで、POSデータを利用して、単品ごとの販売傾向を把握して、死に筋、売れ筋と呼ばれる回転の遅い商品や速い商品の発見に努めることが行われる。すなわち、コンビニエンスストアの限られたシェルフスペースを有効に利用するために、回転の遅い商品をできるだけ早く排除する必要がある。

③多頻度少量の物流システムを導入したこと。
狭い売場面積に、多くの品目を並べるためには、品目ごとに最小限の在庫しか置けないため、多頻度少量の物流システムが必要になる。すなわち、コンビニエンスストアでは、多頻度少量の配送によって在庫の回転率を引き上げ、狭い店舗を一層有効に活用することになる。その際、物流拠点や配送車両を共用させる配送の共同化を行うことや協力的な卸売業者に仕入先を集約化させることで、多頻度少量配送を実現することになる。

通信販売

通信販売は、古くて新しい業態である。古いとは、通信販売という小売業態がすでに19世紀後半にアメリカで確立されたことに基づく。そして、新しいとは、物流や情報処理の技術革新を背景として、この業態が生まれ変わったことを意味している。ただし、通信販売には以下の制約があり、その制約を乗り越える必要がある。

①無店舗であるため、売り手が買い手を買い手が売り手の商品を見つけることが難しくなる。
②無店舗であるため、消費者は実物に触れることができず、実物情報が入手できない。

③商品の受け渡しや代金の支払いを行う場所としての店舗がないという制約かある。

このような制約を乗り越えるために、通信販売業者は、広告やダイレクトメールを大量に出し、顧客の反応を引き出し、顧客リストを作る。広告を通じて好意的イメージができれば、品質リスクを引き下げることができる。さらに、支払いのシステムに関しては、宅配業者やクレジットカード会社などの専門業者によるサービスが利用されることになる。

小売の輪仮説

小売業界の業態革新パターンを説明するために用いられるのが小売の輪仮説である。まず、小売業における新しい業態は、薄利多売(低マージン、高回転)による低価格を訴求する革新として誕生する。ところが、このように低価格で登場した新業態は、時間がたつにつれて、しだいに高マージンの高価格販売に変化することになる。それは、新業態の小売店同士の競争になれば、報復を受けやすい価格競争よりも差別化で利益をあげることが選択されるためである。
このように最初は低価格販売として参入した業態が高価格販売に移行すると、別の新しい業態が、一層の薄利多売による低価格販売を実現して市場に参入する。そして、この新しい業態もやがて高価格販売にシフトするために、また新しい低価格販売の業態が生まれるというのである。このように、業態革新は、輪のように回り続けるというのが小売の輪仮説である。

真空地帯仮説

小売の輪仮説では、低価格で参入するコストリーダー型の業態革新のみが想定されているが、業態革新には、高価格、高サービスによる差別化型の業態革新もあり、両方の業態革新が発生するメカニズムを説明しようとしたのが真空地帯仮説である。
これは、小売業者が低い価格を設定しようとすれば、消費者へのサービス水準を引き下げなければならず、消費者に高いサービスを提供しようとすれば、高価格にならざるを得ないという想定で考える。そして新しい業態による参入は、低価格、低サービスの市場と高価格、高サービスの市場という両極端の真空地帯において発生するというのである。

問題点

①異なる小売市場
両仮説では、新しい業態の生成、発展プロセスを説明するものであるが、これらの新しい業態は、互いに取り扱う商品の種類が異なり、実際にあまり競合しないものも含まれる。

②業態革新の範囲
両仮説において業態革新と呼ばれているものは、現在、業態としての、まとまりを形成しているものである。それは、業態のコンセプトに関わる企業家的な革新という特徴がある。企業家が新しい業態の完結したコンセプトを考察し、店舗への投資を通じて実現した革新であり、その革新は単発的なものと想定されている。他方で業態革新とは、小売流通のプロセス革新として、もっと広い範囲の革新を考えることもできる。

③業態革新のまとまり
両仮説では、なぜ業態ごとに似た特徴を持つのか、またなぜ既存の業態の中からは革新が発生しにくいかを説明できない。


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