2009年8月15日土曜日

ブランドマネジメント

ブランドとは何か?

ブランドとは、製品サービスを特徴づけるために付与される名前やマークの総称である。そして、価値プレミアム効果やロイヤルティー効果といったブランドの効果は、ブランドそのものに内在しているわけではない。ブランドそのものは、単なる名前やマークでしかないが、重要なのは、マーケティング活動の中にブランドを組み込むことで、人々の認識や経験との間に新たな関係を作り出すことである。ブランドの価値の源泉は、この間接的な効果にある。

ブランドがもたらす効果

優れたブランドは、事業の収益性や成長性を高める効果がある。その効果はマーケティングのいくつかの局面で起こる。ブランドの中心的役割は、製品サービスと顧客との絆を強めることにあり、選択代案が存在するなかで、買い手が自社製品を選択する理由を構成することである。これは、価格プレミアム効果とロイヤルティ効果となって表れる。

①価格プレミアム効果
他社の製品サービスよりも高価格で自社の製品サービスを販売できるという効果である。
②ロイヤルティ効果
顧客が自社製品サービスを繰り返し購買するようになるという効果である。

加えて、優れたブランドは企業に事業拡張の機会をもたらす。ブランド拡張やライセンス供与が可能となるのである。

③ブランド拡張
新たな製品サービスを開発したり販売したりする際に、自社の既存の製品サービスに用いてきたブランドを使用することである。
④ライセンス供与
自社のブランドの使用を他社に許可し、その対価としてブランド使用料を得ることである。
上記をまとめると、次のようになる。

優れたブランドの構築→①②③④→収益性や成長性の拡大となる。


信頼と識別の印

ブランドのマネジメントは、ブランドの効果や、その資産としての価値を認識することから始まるがそれだけでは、不十分である。ブランドの効果が生じるメカニズム、すなわち、ブランドの機能を明確にしておくことが欠かせない。ブランドの機能は以下の2つである。

①視覚上の手がかりをマーケティングに組み込むことで生まれる機能
②人々の記憶をつなぎとめておく手がかりをマーケティングに組み込むことで生まれる機能

◎保証機能
ブランドには、保証機能がある。製品サービスに付けられたブランドには、単なるマークと済ますわけにはいかない重みがあることがある。企業がブランドを付与することは、自らの製品サービスの品質や性能に対する自身と責任を表明することなのである。

◎識別機能
識別機能とは、ブランドの付与がその対象となる製品サービス群を1つのものとして特定化する役割を果たしているのである。このように、ブランドは、製品サービスを識別するための印となる。企業にとって、自社の製品サービスを他社のものと差別化する必要に迫られた時、識別機能が必要になる。

このように、マーケティングにおけるブランドの価値は、名前やマークとしてのブランドそれ自体の内在しているわけではない。上述した保証と識別の2つの機能は、マーケティング活動とそれに対する買い手の認識とをブランドが縫合することによって生まれる。

◎想起機能
ブランドの想起機能とは、ブランドが買い手に対して、ある種の知識や感情、あるいは、イメージなどを想起させる機能をいう。想起機能は、ブランドの育成を長期的なマーケティングの課題とする。

①ブランド認知
ブランドの想起機能は、マーケティングコミュニケーションを補完する。人々は、製品サービスを購買する際に、過去の経験に基づく記憶を意思決定のための情報として活用する。ブランド認知には、再認と呼ばれる局面がある。例えば、ナイキのスウィッシュを見て、このマークを知っていることである。さらに、ブランド認知には、ブランド再生という局面がある。商品カテゴリーの提示と連動して特定のブランドが想起されることをブランド再生という。例えば、アイスクリーム→ハーゲンダッツである。

②ブランド連想
また、ブランド再生とは逆の方向で、ブランドの提示と連動して、知識や感情、イメージが想起されることをブランド連想という。例えば、SONY→ウォークマンといった連想である。

これらのブランド連想が、マーケティングマネジメントのプログラムと連動した時、どのような効果が生じるのか?ブランド連想が顧客の高いロイヤルティー効果や価格プレミアムを形成するメカニズムは以下の3つである。

(A)情報処理負荷の削減

ブランドには、買い手が購買時に行う情報処理活動を簡便化するという働きがある。
(B)自己表現の媒体化
自己表現は自らを満足させる行為であると同時に、他者に対するコミュニケーションでもある。すなわち、最先端をいく生活者であろうとする時には、自分自身だけでなく、社会全体もしくは帰属する集団の構成員に対しても最先端に見えなければならない。
(C)有用性の構成
ブランド連想によって、製品サービスの有用性が高まる。ブランドを付加することで、製品に備わっていた有用性がクローズアップされ、より評価される。

まとめ

ブランドの機能と効果
①保証
製品サービスの品質と性能に対する自信と責任の表明
②識別
競合する製品サービスの異質性の強調
③想起
→(ブランド再生)
・想起集合への参入
→(ブランド連想)
・情報処理負荷の削減
・自己実現の媒体化
・有用性の構成

①②③→価格プレミアム効果、ロイヤルティー効果をもたらす。


ブランドの活用と育成

ブランドの活用と育成には、次のようなマネジメントが欠かせない。
①様々な機能のどれをどのタイミングで求めるか
②名前やマークを付与するだけでは限定的な効果しか生まれない。
③ブランドは一朝一夕には出来上がらない。
④ブランドとマーケティングは補完的な関係にある。


プロダクトか?ブランドか?

ブランドのマネジメントにあたっては、マーケティングの基軸を、①製品サービスにおくのか、②ブランドにおくのかを選択しなければならない。

②のブランドを基軸とし、中長期的にブランドの価値を高めていくことが目標となる。それを推進しようとするのが、ブランド価値経営である。それは、ブランドを育てることを企業経営の最重要課題とする。

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