2009年7月31日金曜日

流通9~PB開発の目的~

PB開発の目的

PBとは?

小売業者が生産者の開発した製品を仕入れて販売するだけじゃく、商品の開発に関与し、生産委託のような形で生産活動を指揮する場合があり、その典型がPBである。

なぜ手間をかけてまでPBを扱うのか?

NBによる小売業者間の価格競争の限界が考えられる。そして、そのことは、以下の問題解決行動としてのPB導入を促すことになる。

①利益確保のためのPB
NBの低価格販売では、企業間格差が小さくなるため販売額を伸ばすことは難しい。↓そこで、低価格販売と利益確保の同時達成が可能なPBを導入する。PBはマーケティング費用がかからず、NBの余剰生産能力を利用するため、その分低価格にできる。また、PBは競合する小売業者の取り扱いを排除できるので、低価格で仕入れ販売する効果を排他的に享受できる。

②品揃え差別化のためのPB
品揃えでの店舗差別化は、消費者の特別な店舗選好を形成することにより、店舗間の価格競争による影響を小さくし、対抗な低価格設定抑制する。

PB導入の条件

小売業者が生産者にPBを生産させることは、小売業者が自らの目的達成のために生産者を統制することである。生産者は、NBのシェアが奪われたり、低い仕入れ価格を要求されるため、小売業者と利害が対立している。そこで、パワー関係を統制してPBを生産させるために、もっとも重要なのが、取引依存度に基づくパワー関係である。これは、小売業者が大規模であるほど、生産者が下位の市場地位にあるほど、小売業者のパワーが大きくなる。しかも、たとえ市場地位が高いメーカーでも、PBを拒否する場合、別の生産者がPBを供給することになると自社製品が追いやられる危険性があることから断れないのである。しかし、NBに強いブランドロイヤルティが形成されている場合は、PBの販売を優先すれば、消費者にとって魅力のない店になる。
すなわち、ブランドロイヤルティが弱く、生産者間の市場シェアをめぐる競争や市場参入が激しい場合には、小売業者に有利なパワー関係が形成され、生産者はPBを生産供給する可能性が高くなる。


製販同盟に基づく商品開発

最近では製販統合をベースとする共同開発やPBが新しい展開として注目されている。
製販統合によって、小売販売データの蓄積から商品開発に活かすなど、効率性を高めることができる。したがって、このような商品開発のスタイルは、共同的なプロセスであること、小売り販売のデータベースに基づくものであるという二つの点が従来と異なる点である。つまり、安定的な企業間関係はPB開発を促すのだ。

2009年7月30日木曜日

流通8~小売業者による製販統合~

小売り業者による統制

小売業社が大規模化して生産者や卸売業者による販売依存度が大きくなることで、パワー関係が形成される。小売り業者による生産者や卸売業者の統制は、生産者や卸売業者から安く商品を仕入れるために使われるだけではなく、生産者や卸売業者の緒活動を統制する製販統合あるいは、生産者の商品開発や生産を統制するPB開発が典型である。

製販統合
商品の生産や物流における一連の作業を企業間で連動させて、一気痛貫の生産、流通システムを形成することであり、それにより、生産や物流の効率化を目指すものである。また、これには、2種類の活動の調整が含まれている。

(A)生産者や卸売業者に迅速で多頻度小量の配送をさせるという物流面での調整である。こうすることで、小売業者は在庫を圧縮でき、費用やリスクを削減しながら効率的な品揃え形成を目指すことになる。

(B)生産者や卸売業者の生産活動や在庫管理を連動させることである。そのため、小売業者はPOSデータや在庫データを生産者や卸売業者に提供してかれらの供給体制を整備させるのだ。そのデータをもとに、多頻度小量の生産計画の精度を引き上げることになる。


では、なぜ商業の市場メカニズムに委ねられず、小売り業者による統制という形をとらなければならないのか?

小売り業者と生産者、卸売業者が、それぞれの段階で水平的な競争において、個別に意志決定する限り流通全体の費用からみた最適な在庫形成が達成できないという理由が考えられる。



なぜ多頻度小量配送が要求されるか?

環境変化によって、小売業者への迅速かつ多頻度小量配送が、商品流通をもっとも効率的にするようになったからである。このような市場メカニズムで多頻度小量配送が取り入れる現象を説明する上で有効なモデルが、在庫形成における、延期-投機モデルである。


延期-投機モデルとは?

延期とは、迅速で多頻度小量の注文処理や配送によって、小売業者の在庫形成の意志決定をできるだけ遅くする(つまり延期する)ことである。反対に、小売業者が在庫形成の意志決定を早くすることを在庫形成の投機という。

例えば、ある小売業者が今週の金曜日から三日間の特売のために、商品を注文するとしよう。そして、これまで、仕入れ先の業者が注文を処理して発送するのに、一週間かかっていたのを物流システムの改善で二日間に短縮できたとすれば、小売業者の発注は一週間前の金曜日から今週の水曜日にまで遅くすることができる。これらが在庫形成における延期化である。

このように、他頻度少量配送は、小売業者の在庫を削減する。ただし、在庫形成を延期化すれば、小売業者の在庫費用を削減する反面、別の費用が上昇することになる。例えば、延期化すれば、そのための物流、情報システムに費用がかかる。これらの費用は、供給業者が負担することになる。そのため、ただ単に他頻度少量配送による延期化をすれば良いというわけではなく、小売業者、と供給業者の負担する合計費用が最も少なくなるように考慮しなければならない。


延期化の流れ

近年、最適な配送のリードタイム、頻度、ロットサイズは延期の方向に移動している。それは需要不確実化技術革新によって迅速で、他頻度少量の配送をもたらしていると予想される。(P163図8-4参照)


なぜ、小売業者は製販統合を目指すのか?

小売業者主導の延期型システム

小売業者主導で延期化されるのは、以下の要因にある。

(A)費用に関する問題生産者や卸売業者にとっては、他頻度少量配送によって上昇する物流情報処理量の費用が十分に償えない懸念が生じるため、在庫形成の延期化に消極的になる可能性があるため、小売業者主導で行う。

(B)同盟関係への発展。生産者、卸売り業者における水平的な競争や小売業者との取引における情報の不確実性を残したままでは、在庫形成の延期化が不徹底になりやすいからである。本来の水平的競争に任せておけば、生産者は、なるべく大量におおきなロットサイズで受注するように努力するだろう。このことは、他頻度少量の流通システムを2つの理由で損なわれる。

1、実需を反映しない一時的な押し込み販売により在庫費用が増加する。
2、流通量が大きな振幅を持つことにより、小ロットに平準化できない。


すなわち、延期型の流通システムでは、顧客の実需に基づいた注文を過不足なく捕捉し、それに基づく適時適量の流通を行うことが条件となる。そのため、供給業者の販売活動を抑制する必要があり、小売業者は、特定の供給業者との間に特別な協力関係を築き、販売の競争を抑制することで、延期的な流通システムによる効率化を達成しようとするのである。

2009年7月29日水曜日

流通7~生産者による流通系列化~

流通系列化とは?

生産者が卸売業者や小売業者との間にパワー関係を形成して、垂直統合することなく、生産者直営の販売拠点のように販売やサービスにおける協力を確保することである。生産者は、商業を利用することで、ほとんど資本を固定することなく、状況に応じて取引関係を拡大、縮小できる。
また、商業者は生産者から独立しており、それは、生産者にとって好ましくない状況が生まれる恐れがある。そこで生産者は商業者を自律的に統制するのである。

では、商業者の自由な行動は生産者にとってどのような問題をもたらすのか??

①商業者の品揃え形成活動
生産者は、他生産者と競争しているので、自社の製品を優先的に扱うことを臨むが、商業者と生産者は独立した企業であるが故に、商業者の品揃え形成は生産者の意図とは無関係に行われる。
                       ↓
そこで生産者は、商業者の自由な品揃えを統制することで、商業者の仕入額に占める自社商品比率を高めようと考えることになる。ただ、そのことは、商業者の存立基盤を損なう恐れがあるので、自社製品で消費者を吸引できるように、製品差別化の努力をしなければならない。


②商業者の販促・サービス活動

小売業者は、消費者への販促サービス活動を通じて生産者による製品差別化への影響力を持っている。それ故、小売業者が自主的に販促を行うことは、生産者の意図する製品差別化を侵害する危険性がある。
                ↓
そこで、生産者は、その危険性を取り除き、さらに積極的に小売業者の販促活動を生産者のマーケティング活動に連動させて、製品差別化の強化を狙うようになる。
ただ、販促は、小売業者にとって、コストがかかるため、見返りを提供することでパワー関係を統制しなければならない。

また、小売業者の販促活動を統制するためには、生産者は、2種類のフリーライドに対応しなければならない。

(A)小売業者間での情報サービス提供についてのフリーライド
消費者が販促サービスを行う店舗で情報を得て、販促サービスを行わず、その分低価格で提供している店舗で購入してしまうことである。

(B)パワー資源を提供する場合に生じる生産者間でのフリーライド
小売店舗で、自社の販促ツールやノウハウを使って、他者商品を販売されてしまうことである。そこで、生産者は、競合商品の取り扱いを制限する必要がある。

③商業者の競争行為
商業者の競争を制限することは、商業者が利益を上げやすいという意味においてパワー資源となる。そこで、生産者は、商業者の競争行為を監視し、競争制限に違反する商業者がいれば、ただちに商品の提供をストップするなど対処が必要である。


流通系列化の現実的問題

現在では、家電製品や化粧品産業で、系列店制度が以前より弱くなっている。その要因は以下の2つ考えられる。

①消費者行動の変化
販促サービス活動の統制にとって重要なのは、消費者が小売業の提供する情報サービスに依存するかどうかが重要である。ところが、消費者に商品知識が蓄積されるようになると、消費者は小売業者のもたらす情報に依存しなくなるのである。また消費者は、このような状況では、系列店より低価格な量販店を消費者は選択するのである。

②量販店販売比率の増加
大規模で大量販売する量販店は、生産者から見れば販売依存度が高く、量販店から見れば仕入依存度が低いため、パワー関係において生産者は不利である。
また、量販店は、生産者の統制を受け入れにくい理由がある。

(A)品揃えを形成して消費者を吸引しているため、品揃え形成の統制が難しい
(B)消費者に特定商品の販促を期待できない。
(C)競争行為を制限されることは、低価格戦略と矛盾する。


まとめ

上記のことから、生産者は、流通系列化にに基づいて中小小売業者を中心とする販売、サービス体制を維持するのか、量販店の持つ販売力を利用するのかという重大なディレンマに陥っている。

2009年7月24日金曜日

流通6~商業におけるパワー関係~

パワー関係とは?

パワーとは、特定の相手の行動を統制できる能力のことで、パワー関係は、そのような統制できる関係を意味する。統制とは、自分の意思に沿った特別な行動を他者にさせることである。

このような統制の最も典型的なものとして、流通系列化がある。

流通系列化とは?

商業者の仕入活動や販売活動などでの特別な作業をさせることに使い、それによって、あたかも垂直統合された販売拠点のように管理しているのである。また、大規模小売業者が仕入先に対してパワーを持つようになり、生産者者や卸売業者に特別な貢献をさせて、多頻度少量の配送システムを形成させたり、PBを生産させたりしている。これは、小売業者による統制である。


それでは、どのようにパワーが形成されるのか??

①依存関係によるパワー形成

パワー関係の有無に重要な影響を与えるのは、企業の規模ではなく、取引における依存関係である。依存関係は、企業Aが企業Bに商品を販売している場合、AのBへの依存度(販売依存度)、BのAへの依存度(仕入依存度)の2つによって決まる。

そして、この依存度は、
(A)相手との取引の重要度が大きいほど(B)その取引相手以外に代替的な取引相手が少ないほど大きくなる。

他にも、生産者がブランド戦略に基づいて消費者に強いブランドロイヤルティを形成した場合、生産者は小売業者に対してパワー関係を形成できる。他方で、小売業者が消費者にとって魅力的な立地などで差別化している場合は、生産者はその小売業者に依存しやすいと言える。

要するに、依存関係に関して言えば、取引における比重と商品や店舗の差別化によってパワー関係が規定されるといえる。

しかし、依存関係によるパワー形成には不都合な点がある。1つは、依存関係は産業構造に規定されるため、十分なパワー関係を形成できない可能性がある。2つめは、取引相手の違いによるパワー関係にばらつきが生じてしまう。そこでパワー資源活用される。


②パワー資源によるパワー形成

相手に経済的メリットがあるパワー資源を提供して、その見返りとして相手の行動を引き出すのである。

(A)リベート
生産者が商業者に商品取り扱い量や店舗内シェアを高めてもらいたいときに支出する数量リベートや、生産者の設定した販売促進計画に協力させるための販促リベートなど多様な種類がある。そしてリベートには以下のメリットがある。

第1に、リベートは特定の取引相手だけを差別的に優遇できる。第2に、リベートは価格よりも柔軟に運用しやすい。

逆にデメリットもある。第1に、リベートによって取引相手の市場による価格競争を促進してしまう恐れがある。第2に、リベートを出す基準が複雑で分かりにくいことや事後的に調整することがデータ処理の妨げになる。


(B)物資や情報によるパワー資源
物資や情報など価値のある資源を提供することでパワー関係を形成するのである。例えば、商品のパンフレットやPOP広告、陳列ケースなどである。


(C)競争制限によるパワー資源
販売する地域を制限テリトリー制度や販売する価格を統制する再販売価格維持制度などのように、商業者間での競争を制限することである。また、生産者が小売業者の競争を制限することは、競争から守られる小売業者の利益となるために、パワー資源となるのである。

2009年7月15日水曜日

流通5~商業における信頼関係~

商業における取引関係において信頼関係は極めて重要な位置を占める。ここで言う信頼関係とは2つある。

(1)情報の信頼性・・・交渉などの情報交換において、取引相手に情報を開示する必要がある。                        
(2)行為の信頼性・・・交渉で決められた契約を守ったり、相手の期待する行為をすることである。

それでは、信頼関係を構築することに、どのようなメリットがあるのだろうか?

(1)取引費用の節約が生じることである。

(2)取引が安定的に継続し、互いに情報をオープンにすれば、売り手と買い手が互いに取引相手の知識を蓄えやすくなり、商品開発や生産の効率化が進む。

(3)信頼関係が形成され、取引が安定すると、取引相手に合わせた設備や技術の投資が進みやすくなる。


信頼関係を構築するメリットが多いにもかかわらず、信頼関係が形成できない原因はどこにあるのだろうか?

それには以下の3つの障壁が予想される。

(1)一方的なコミットメントの危険性
→信頼関係が売り手と買い手のどちらか一方による行動や態度では形成できないのである。相手企業が信頼関係の形成に積極的か消極的のいずれの場合でも、自企業は、消極的な方が有利となる。このような理由から信頼関係が形成されにくいと考えられる。

(2)市場取引への執着
→買い手が不安定な市場取引のメリットを過大に評価する傾向がある。つまり、短期的な利益を優先して長期的な信頼関係に繋がりにくいと考えられる。

(3)信頼関係による成果の不確実性
→信頼関係による成果が必ずしも確実ではないということである。また、成果が得られたとしても、パワー関係によって成果が一方に偏り、配分が少ない場合も、信頼関係が形成されないと考えることができる。


それでは、いかにして信頼関係を構築すればよいのか?

信頼関係の形成において重要となるのは、双方の信頼関係において意志を明確にすることであり、それが揺ぎ無いという確信を与えることである。

また、経営者同士や担当者同士の個人的な信頼関係を形成することも同様に重要である。そのことにより、個人的な信頼関係を失うことに関するペナルティーを設けることに繋がり、一方的コミットメントの危険性が回避される。

まとめ

信頼関係に関しては、継続的な関係をもたらすことで競争に通じた柔軟な商業の構造的変化を阻む原因の1つになると考えられるが、様々なメリットもあり、取引においては信頼関係を含んだ考え方が必要になる。近年盛んな流通系列化や、PB(プライベートブランド)開発においては、特に信頼関係が重要となるのである。

流通4~現代の流通構造~

情報化の影響

近年のIT革命は、商品流通に大きな影響を与えている。

(1)物流システムにおける情報化(生産者と商業者の間での情報技術の導入)
(2)消費者への商品販売(Eコマース、電子商取引)

物流情報システム

物流センターを構築し、物流を集約的に管理しながら、多頻度少量配送をするため自動化、情報化を進めている。(オンライン受発注システム(EOS)、POSシステムなど)そして、以下の効率化をもたらす。

(1)注文情報の交換における効率化
(2)物流作業における効率化
(3)商品流通の短縮化

つまり、商業者が空間的懸隔を効率的に埋め、在庫の補充を容易にするため、少ない在庫で時間的な懸隔を埋めることができる。その結果、商業者による流通サービス処理能力を引き上げるので、流通段階は減ることが予想される。


Eコマース

減少する費用

(消費者費用)
買いものに出掛ける移動費用
商品を持ち帰る輸送費用
買いものの時間的制約による費用
複数商品を買い揃える費用
情報収集費用(単純な)

増加する費用

(消費者費用)
複雑な情報の収集費用
待ち時間による費用

(流通サービス費用)
情報システム費用
広告、販促費用
物流費用

最寄品・・購買頻度は高いが、商品が届くまで時間がかかるのが問題で、向いていない。
買回品、専門品・・商品を探索したりする費用が節約できるが、購買頻度が低いことが問題である。


まとめ

インターネット販売による商品流通が、従来の店舗販売に比べて効率的かどうか、インターネット販売が大きなシェアを取るかどうかは、これらの消費者費用と流通サービス費用の違いによる影響を受ける。

2009年7月14日火曜日

流通3~卸売り商業の構造~

流通の多段階化とは?

生産者ー卸売り業者ー小売業者ー消費者へと取引が繰り返されるわけだが、取引が行われる市場のことを段階と言い、その段階が多くなることをいう。

流通の多段階化を生み出す要因とは?

また、商業者が多段階化することで、生産と消費の空間的懸隔を埋める役割を果たす。そして、多段階が形成されるなら、以下のことが予想される。

(1)消費者は近くの店舗を利用する傾向が強い。
(2)生産者の物流能力が低いために、商業による物流作業への依存が高い。
(3)商業者の物流処理能力が低いために、多段階の商業者間での分業が必要になる。

また、ほとんどの商品は生産される時期と消費される時期が異なってくる。このような生産と消費の時期が異なる時、商業者が商品を保管して、時間的懸隔を埋めるのである。

また、流通の多段階化は、品揃えの懸隔を埋める。品揃えの懸隔とは、生産段階では、少数の種類で大量に生産する傾向があるが、消費者のもとでは、多数の種類で少数の製品の集合が必要になる。品揃えを形成するために、商品の組み換えニーズが高まるほど、小売業者の手に負えず、分業するなど、多段階化するのである。

つまり、生産者と商業者が流通サービスを提供し、空間的懸隔、時間的懸隔、品揃えの懸隔を埋めてくれるほど、消費者のすべき作業量が減ることを意味している。


日本の多段階流通構造

日本の流通が欧米に比べて、多段階化する原因は、2つ考えられる。

(1)消費者行動の違い(徒歩、自転車を多用するなど、消費者費用を避ける)
(2)商業者の処理能力不足(日本の商業者は小規模なものが多いため)

しかし、近年、流通が短縮化されている傾向がある。それは、流通の中抜き現象と呼ばれている。以下の影響が考えられる。

(1)モータリゼーションの発達
(2)加工、冷凍食品の普及により、保存が可能に。
(3)スーパー、コンビニなどの、全国的に店舗を展開している企業の増加。

まとめ

生産者ー消費者に商品が届くまでに、一定のコストがかかり、そのコストを誰が負うのかによって流通の段階は変わってくる。例えば、消費者がコストを避けたがる場合は、商業者が多段階化し、コストを負う。(特に最寄品)逆に、消費者がコストを負う場合は、商業者の負担するコストが減る。(ブランド価値の高い商品など専門品)

流通2~小売商業の構造~

効率的な商品流通のために、どれだけの商業者が必要になるのか?

商品の種類による店舗数、店舗密度の違い

(例)加工食品は店舗数が多いが登山用品店は少ない。

国や地域によって店舗数、密度が違う

(例)日本はアメリカに比べて店舗数が多く、小規模である。


小売店舗数はどのように決まるのか??

消費者費用、生産者サービス費用、流通サービス費用を合計した流通費用がもっとも低くなるように決まる。

小売店舗数が多くなるほど生産者、商業者の流通サービス費用は増加する。それは以下の要因が働くためである。


1、店舗ごとに商品を仕分ける作業が複雑化するため費用が高くなる。

2、小売店舗に配送するための物流費用が高くなる。
              ↓
小売店舗数が少なく、大規模店舗が多い方が効率的で消費者も探索費用が節約されるかもしれない。しかし、消費者にとって店舗が減ることは不便である。いずれにせよ、消費者は、商品価格と消費者費用がもっとも低くなるような店舗を選ぶ。

つまり、商品の需給が一定なら、消費者の小売店舗選択には、以下の3つが影響する。

1、店舗数が増えるほど生産者、商業者が商品を仕分け配送する流通費用が高くなる。

2、店舗数が多くなるほど、消費者が店舗に出掛けて商品を持ち帰る消費者費用が低くなる。

3、店舗数が少なくなり、大規模化するほど、まとめ買い、探索する消費者費用は低くなる。

(P43図参照)


商品によって異なる消費者行動

最寄品・・消費者が商品の探索や購買について、できるだけ少ない努力で手に入れようとする種類。
探索努力→少ない、購買努力→少ない
(例)食料品、日用雑貨品、医薬品

買回品・・消費者が購買の努力を惜しまず、商品の価格、品質、デザインを慎重に比較する種類。
探索努力→多い、購買努力→多い
(例)服、電化製品、

専門品・・消費者が既にブランド選好を持っており、店頭でのブランド比較をしないような種類。
探索努力→少ない、購買努力→多い
(例)ブランド品

これらの類型は、店頭での商品の探索努力と店舗への往復にかける購買努力への平均的な傾向によって分類される。

このように考えると、消費者の選択する店舗、店舗数は以下の傾向を持つ。

1、最寄品は、多数の近隣にある小売店舗で販売されやすい。ただし、大規模店舗の販売シェアが大きくなるにつれて、店舗数は減少する。

2、買回品は、最寄品より少ない数の小売店舗で販売される。そして、地域における品揃えを形成するために、大規模店舗か、都市の中心部に密集して立地する店舗で販売される。

3、専門品は、最寄品、買回品より少ない店舗で販売される。また、ブランド選好のため、品揃えの深さは必要なく、商品の供給量が限られるため、同業種の店舗が数多く密集することは、買回り品ほど多くない。


なぜ日本の小売店密度が高いのか??

日本の小売が小規模多様性を持っている原因は、以下のように考えられる。

1、最寄品の買いものは、徒歩や自転車ででかけることが多い。

2、欧米に比べて生鮮食品が多く、まとめ買いしにくいため、こまめに買いものする。

                  ↓
消費者行動の変化により、小規模多数な店舗は解消されつつある。
例えば、冷凍食品などの消費量増加、自動車の発達、単身者は、利便性を重視し、コンビニを重宝。

2009年7月13日月曜日

流通1~商業とは何か~

中間業者を省くことは効率的か?

答えは否。なぜなら、中間業者を省くことによって、中間業者が本来負っていたコストが、製造業者あるいは、消費者にかかることになるからである。つまり、製造業者ー卸売業者ー小売業者ー消費者の流れの中で、それぞれが、役割を分担しているのである。

それでは、商業者(卸売り業者、小売業者)の役割とは何だろうか?

1、空間的効用

商業者が存在しなければ、商品を生産者から直接購入しなければならないため、不便である。つまり、商業者は、生産者と消費者の空間的な距離を埋める役割を果たすのである。

2、時間的効用

商業者が存在することで、製造業者は、製造に集中でき、商業者は販売に集中できるといった分業が成立するため、消費者は、店舗の営業時間中であれば、いつでも商品を入手できるといった時間的な効用を作り出したと言えるだろう。

3、所有権の移転というリスクを引き受ける

商業者じゃなくても、空間的、時間的効用は作り出せる。例えば、物流業者など。しかし、商業者は物流業者と違い、所有権を引き受け、リスクを負っているという違いがある。商業者が、なぜリスクを負うかと言えば、商品を仕入れることで品揃えを形成できるからである。

品揃えがもたらす経済的メリットとは?

品揃えを形成することで、商品流通を効率良くすることができる。そのメカニズムは以下の2つである。

1、取引数節約

品揃えの広さによってもたらされ、消費者が多様な商品を買い揃える場合に、取引の数を節約できる。
例えば、3人の消費者がおり、3種類の野菜を購入しなければならない場合、単純に3×3=9回の接触が必要である。しかし、1人の商業者が介在すると、生産者が商業者と3回取引し、消費者が商業者と3回取引する。つまり、3+3=6回の取引で済むのである。

2、情報縮約の効果

上記と同じ理屈で、商業者が品揃えを形成することで、消費者が欲しい商品を探索するコストが、節約されるのである。


それでは、いかにして流通費用が節約されるのだろうか?

まず、前提として、消費者に渡るまでの流通費用は以下の3つである。

1、消費者費用

消費者が負担する費用であり、商品を買う際の、金銭的な費用、時間や労力、心理的な負担を含んだ費用である。

2、商業者サービス費用

商業者がこなしている様々な流通サービスに対する費用である。

3、生産者サービス費用

商品を流通させるために生産者が負う費用である。そして、生産者の販売価格とは、2、3の費用を合わせた価格である。

商業者の品揃え形成による流通費用の節約とは、商業者が介在した場合に、1、2、3の総合計が、生産者と消費者が直接取引する場合に比べて低くなっていることにより表される。

それでは、具体的に、それぞれの費用節約について説明する。

1、消費者費用の節約

a、取引や探索における移動費用の節約

b、取引や探索の費用節約

2、生産者流通サービス費用の節約

商業者が介在することにより、生産者の交渉、取引費用が節約される。もし、商業者がいなければ、生産者は、各消費者との取引を行わなければならない。

3、流通サービス費用の節約

商業者が介在することにより、合計費用が少なくなる。消費者の立場に立てば、商業者から商品を購入する方が、生産者から直接購入するよりも、商品の店頭価格と、消費者費用を合わせた費用が少なくて済むのである。(数式は、p25)

まとめ

商業者とは、多くの製造業者から商品を買い集め、品揃えの深さや広さを形成することで、商品流通の効率性を高めるという貢献をしている。
つまり、商業者というのは、1、品揃えの広さや深さを形成し、2、生産者から消費者への商品流通を媒介する業者であり、多数の生産者の商品を取り揃えるには、生産者から独立している必要がある。

はじめに。

これからマーケティングを勉強していくにあたって、ノート替わりに書き溜めていきたいと思います。基礎的な理論体系をまとめ、日々変化していく事例をその枠組みで説明できることを目的としています。