2009年7月30日木曜日

流通8~小売業者による製販統合~

小売り業者による統制

小売業社が大規模化して生産者や卸売業者による販売依存度が大きくなることで、パワー関係が形成される。小売り業者による生産者や卸売業者の統制は、生産者や卸売業者から安く商品を仕入れるために使われるだけではなく、生産者や卸売業者の緒活動を統制する製販統合あるいは、生産者の商品開発や生産を統制するPB開発が典型である。

製販統合
商品の生産や物流における一連の作業を企業間で連動させて、一気痛貫の生産、流通システムを形成することであり、それにより、生産や物流の効率化を目指すものである。また、これには、2種類の活動の調整が含まれている。

(A)生産者や卸売業者に迅速で多頻度小量の配送をさせるという物流面での調整である。こうすることで、小売業者は在庫を圧縮でき、費用やリスクを削減しながら効率的な品揃え形成を目指すことになる。

(B)生産者や卸売業者の生産活動や在庫管理を連動させることである。そのため、小売業者はPOSデータや在庫データを生産者や卸売業者に提供してかれらの供給体制を整備させるのだ。そのデータをもとに、多頻度小量の生産計画の精度を引き上げることになる。


では、なぜ商業の市場メカニズムに委ねられず、小売り業者による統制という形をとらなければならないのか?

小売り業者と生産者、卸売業者が、それぞれの段階で水平的な競争において、個別に意志決定する限り流通全体の費用からみた最適な在庫形成が達成できないという理由が考えられる。



なぜ多頻度小量配送が要求されるか?

環境変化によって、小売業者への迅速かつ多頻度小量配送が、商品流通をもっとも効率的にするようになったからである。このような市場メカニズムで多頻度小量配送が取り入れる現象を説明する上で有効なモデルが、在庫形成における、延期-投機モデルである。


延期-投機モデルとは?

延期とは、迅速で多頻度小量の注文処理や配送によって、小売業者の在庫形成の意志決定をできるだけ遅くする(つまり延期する)ことである。反対に、小売業者が在庫形成の意志決定を早くすることを在庫形成の投機という。

例えば、ある小売業者が今週の金曜日から三日間の特売のために、商品を注文するとしよう。そして、これまで、仕入れ先の業者が注文を処理して発送するのに、一週間かかっていたのを物流システムの改善で二日間に短縮できたとすれば、小売業者の発注は一週間前の金曜日から今週の水曜日にまで遅くすることができる。これらが在庫形成における延期化である。

このように、他頻度少量配送は、小売業者の在庫を削減する。ただし、在庫形成を延期化すれば、小売業者の在庫費用を削減する反面、別の費用が上昇することになる。例えば、延期化すれば、そのための物流、情報システムに費用がかかる。これらの費用は、供給業者が負担することになる。そのため、ただ単に他頻度少量配送による延期化をすれば良いというわけではなく、小売業者、と供給業者の負担する合計費用が最も少なくなるように考慮しなければならない。


延期化の流れ

近年、最適な配送のリードタイム、頻度、ロットサイズは延期の方向に移動している。それは需要不確実化技術革新によって迅速で、他頻度少量の配送をもたらしていると予想される。(P163図8-4参照)


なぜ、小売業者は製販統合を目指すのか?

小売業者主導の延期型システム

小売業者主導で延期化されるのは、以下の要因にある。

(A)費用に関する問題生産者や卸売業者にとっては、他頻度少量配送によって上昇する物流情報処理量の費用が十分に償えない懸念が生じるため、在庫形成の延期化に消極的になる可能性があるため、小売業者主導で行う。

(B)同盟関係への発展。生産者、卸売り業者における水平的な競争や小売業者との取引における情報の不確実性を残したままでは、在庫形成の延期化が不徹底になりやすいからである。本来の水平的競争に任せておけば、生産者は、なるべく大量におおきなロットサイズで受注するように努力するだろう。このことは、他頻度少量の流通システムを2つの理由で損なわれる。

1、実需を反映しない一時的な押し込み販売により在庫費用が増加する。
2、流通量が大きな振幅を持つことにより、小ロットに平準化できない。


すなわち、延期型の流通システムでは、顧客の実需に基づいた注文を過不足なく捕捉し、それに基づく適時適量の流通を行うことが条件となる。そのため、供給業者の販売活動を抑制する必要があり、小売業者は、特定の供給業者との間に特別な協力関係を築き、販売の競争を抑制することで、延期的な流通システムによる効率化を達成しようとするのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿