2009年7月29日水曜日

流通7~生産者による流通系列化~

流通系列化とは?

生産者が卸売業者や小売業者との間にパワー関係を形成して、垂直統合することなく、生産者直営の販売拠点のように販売やサービスにおける協力を確保することである。生産者は、商業を利用することで、ほとんど資本を固定することなく、状況に応じて取引関係を拡大、縮小できる。
また、商業者は生産者から独立しており、それは、生産者にとって好ましくない状況が生まれる恐れがある。そこで生産者は商業者を自律的に統制するのである。

では、商業者の自由な行動は生産者にとってどのような問題をもたらすのか??

①商業者の品揃え形成活動
生産者は、他生産者と競争しているので、自社の製品を優先的に扱うことを臨むが、商業者と生産者は独立した企業であるが故に、商業者の品揃え形成は生産者の意図とは無関係に行われる。
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そこで生産者は、商業者の自由な品揃えを統制することで、商業者の仕入額に占める自社商品比率を高めようと考えることになる。ただ、そのことは、商業者の存立基盤を損なう恐れがあるので、自社製品で消費者を吸引できるように、製品差別化の努力をしなければならない。


②商業者の販促・サービス活動

小売業者は、消費者への販促サービス活動を通じて生産者による製品差別化への影響力を持っている。それ故、小売業者が自主的に販促を行うことは、生産者の意図する製品差別化を侵害する危険性がある。
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そこで、生産者は、その危険性を取り除き、さらに積極的に小売業者の販促活動を生産者のマーケティング活動に連動させて、製品差別化の強化を狙うようになる。
ただ、販促は、小売業者にとって、コストがかかるため、見返りを提供することでパワー関係を統制しなければならない。

また、小売業者の販促活動を統制するためには、生産者は、2種類のフリーライドに対応しなければならない。

(A)小売業者間での情報サービス提供についてのフリーライド
消費者が販促サービスを行う店舗で情報を得て、販促サービスを行わず、その分低価格で提供している店舗で購入してしまうことである。

(B)パワー資源を提供する場合に生じる生産者間でのフリーライド
小売店舗で、自社の販促ツールやノウハウを使って、他者商品を販売されてしまうことである。そこで、生産者は、競合商品の取り扱いを制限する必要がある。

③商業者の競争行為
商業者の競争を制限することは、商業者が利益を上げやすいという意味においてパワー資源となる。そこで、生産者は、商業者の競争行為を監視し、競争制限に違反する商業者がいれば、ただちに商品の提供をストップするなど対処が必要である。


流通系列化の現実的問題

現在では、家電製品や化粧品産業で、系列店制度が以前より弱くなっている。その要因は以下の2つ考えられる。

①消費者行動の変化
販促サービス活動の統制にとって重要なのは、消費者が小売業の提供する情報サービスに依存するかどうかが重要である。ところが、消費者に商品知識が蓄積されるようになると、消費者は小売業者のもたらす情報に依存しなくなるのである。また消費者は、このような状況では、系列店より低価格な量販店を消費者は選択するのである。

②量販店販売比率の増加
大規模で大量販売する量販店は、生産者から見れば販売依存度が高く、量販店から見れば仕入依存度が低いため、パワー関係において生産者は不利である。
また、量販店は、生産者の統制を受け入れにくい理由がある。

(A)品揃えを形成して消費者を吸引しているため、品揃え形成の統制が難しい
(B)消費者に特定商品の販促を期待できない。
(C)競争行為を制限されることは、低価格戦略と矛盾する。


まとめ

上記のことから、生産者は、流通系列化にに基づいて中小小売業者を中心とする販売、サービス体制を維持するのか、量販店の持つ販売力を利用するのかという重大なディレンマに陥っている。

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