2009年8月14日金曜日

関係性マーケティング

関係性パラダイム(マーケティング)とは?

企業と外部との関係性に注目しており、その基本枠組みとして関係性の結合対象と、②関係性そのものの内容とを規定するところから始まる。したがって、関係性マーケティングは、まず、企業と顧客との関係性、取引先との関係性、資本家、投資家との関係性、社会、大衆との関係性といった様々な次元から論じることができる。これらの結合対象は、ステークホルダーと言われているものである。しかし、関係性マーケティングを特徴づけているのは、関係性の内容であり、その中心概念は、インタラクションである。

交換パラダイムから関係性パラダイムへのシフト

交換パラダイムとは、売り手と買い手の双方にとって価値のある交換を実現することがマーケティングの中心的な課題である。つまり、相手のメリットになる提案を行いながら、自社の立場を強めていく道を探った方が、はるかに大きな果実が手に入る。事業を成長させるためには、売り手と買い手のWIN-WIN関係を確立しなければならない。そして、近年、交換パラダイムに対して、新たに注目され始めているのが、関係性パラダイムである。交換パラダイムによって一度関係が出来上がると、交換パラダイムとは違った取引の世界が出現する。関係性を重視するこのマーケティングパラダイムは、リレーションシップマーケティングと呼ばれることもある。このパラダイムシフトが起こった背景として、

①市場の成熟化

需要が大きく伸びている間では、新規顧客を獲得することも難しくないが、産業が成熟期に入ると状況が変わる。市場が成熟化すると、さらに成長するために、競合他社とのパイの奪い合いになり、マーケティングコストが上昇する。そして、買い替え需要が中心になるなど、需要の中身が変化する。このように、成熟期に入ると、新規顧客を獲得するハードルが高くなり、市場シェアの高い企業にとっては、既存顧客のボリュームの方が大きくなるため、既存顧客との関係性を重視した方が賢明である。

②アフターマーケットの拡大

アフターマーケットとは、製品サービスの販売後、それに付随して生じる修理や部品交換などの需要を対象として形成される市場のことである。アフターマーケットは、製品が高度化、複雑化するとともに拡大する傾向がある。そして、企業がアフターマーケットにアプローチする際にも、顧客との関係を継続させることが重要な課題となる。

③情報技術の発展
近年関係性パラダイムが注目されるようになったのは、顧客データベースを構築し、その分析を通じて顧客関係のマネジメントを高度化していこうというアイディアが現実味を帯びてきたからである。情報技術を顧客関係のマネジメントに活用しようとするアイディアをCRMと呼んでいる。このように、情報技術の発展によって現実的な手法の可能性が広がったことも、顧客との関係のマネジメントに対する関心を高める要因となっている。

顧客との長期的な関係を形成することのメリット

関係性パラダイムは、顧客との関係を創造し維持することをマーケティングの中心課題として位置づける。そのメリットは以下の通りである。
①取引コストやリスクの低下

企業が顧客と長期的な関係を築くことができれば、長期的な信頼関係をもとに、新製品開発や合理化のために思い切った投資ができるようになる。

②販売機会の拡大
顧客のニーズやその変化を長期的にとらえていくことで、クロスセリングやアップセリングを行うことが可能となる。クロスセリングとは、自社製品の顧客に対して、さらに関連する他の製品サービスを販売していくことであり、アップセリングとは、再購買時に、よりグレードの高い製品サービスへアップグレードすることである。

③顧客獲得コストの低減
新顧客獲得には、既存顧客を維持するのに必要なコストの数倍になると言われている。


顧客関係の識別と選択

顧客関係は、新規顧客に比べコストを抑えることができるため、企業にとっては、資産とみなすことができる。では、こうした自社の資産として育成しようとする時、どのようなマネジメントを行うべきだろうか?
①顧客関係の識別と選択
顧客関係のマネジメントに関しては、まず、顧客関係の識別と選択を行わなければならない。企業としてどの顧客との関係に投資し、育成していくのかを見極めるのである。自社の顧客の中から特に重要な優良顧客を識別し、選択的な対応を行っていくことになる。その前提となる枠組みは、市場細分化によって与えられる。細分化によって、企業は、潜在的な顧客の中から顕在化させるべき顧客グループを識別することができる。また、顧客関係の識別と選択においては、顧客生涯価値も識別しなければならない。

②顧客関係の維持と修復
顧客関係を維持するためには、以下の3つの課題に取り組まなければならない。

(A)スイッチング障壁の形成
スイッチングコストを高めることによって顧客の離脱を防ぐというものである。一方、顧客満足の実現とは、自社の製品サービスに対する顧客の満足度を高め、その購買を継続することである。
スイッチング障壁は例えば、①会員制②長期間割引③ポイントプログラム④移動コスト⑤経験⑥信頼関係などがある。そして、スイッチング障壁を活用するためには、次のことを考慮しなければならない。①他社に先行する。②新規顧客獲得に及ぼす負の影響を見逃さない。

(B)顧客満足

顧客満足は、事前の期待と実際に体験したサービスへの評価の差によって規定される。事前の期待を大きく上回る体験をすれば、とても満足するが、期待以下なら不満を覚えるだろう。また、顧客満足度調査は、自社の製品サービスに対する顧客満足度の実態を把握し、顧客からどの程度支持を得ているかを診断する調査である。満足度調査を読み解くには、不満より満足の方にバイアスがかかるため、相対評価をもとにした分析が望ましい。

◎満足度-インパクト分析
製品サービスごとに、満足度(パフォーマンス)と重要度(インパクト)という2つの観点から質問を行い、マトリックスで、次のように集計される。
①重要度も高く、満足度も高い場合→→→企業にとっては望ましい成果が出ている。
②重要度は低いが満足度は高い場合→→改善すべきだが他の需要な属性が犠牲になれば問題。
③重要度も低く、満足度も低い場合→→→満足度の低さは問題だが、顧客は重視していない。
④重要度は高いが満足度が低い場合。→→早急に改善すべき属性。

◎顧客関係の修復
良好な関係を築いても、なんらかの不具合や不手際で顧客が不満を抱くことは避けられない。その場合は、迅速に対応すべきである。顧客も、不満が解消されるならスイッチング障壁をわざわざ乗り越えて他社製品に乗り換えるメリットは少ないからである。したがって、顧客の苦情は前向きに捉え、顧客からの贈り物であるとみなすべきである。ただし、ほとんどの顧客は、不満を抱いても苦情を言わずに乗り換えるため、顧客に苦情を言わせる工夫が必要である。具体的には、①迅速な対応で問題の原因について説明する。②権限を従業員に委任する。③従業員に顧客満足の価値を得心してもらう。などである。

③顧客関係を高める組織
顧客との関係の識別や選択、あるいは、その維持や修復のための取り組みを継続していく必要がある。こうした一連の取り組みを実践していくには逆ピラミッド型組織が適していると言われる。一般的な企業の階層的な組織構造は頂点としたピラミッド型組織であるが、逆ピラミッドは、最上位に顧客が位置し、その下に顧客と直接接する現場の従業員が位置するという形の図式で階層的な組織構造を描いたものである。

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