2009年8月11日火曜日

プロセスとしての競争

企業間の競争を分析するには、「プロセスとしての競争」という考え方が必要となる。プロセスとしての競争は、構造としての競争と補完的な関係にある競争の作動である。かつて、オーストリア学派が強調したように、競争には、新たな知識や情報を生み出すという働きがある。プロセスとしての競争は、この知識創造のプロセスとしての競争をとらえたものである。

プロセスとしての競争は、事業の定義を研ぎ澄ますプロセスとなる。企業は、他社との競争を通じて、独自の経営資源や能力を新たに発見していく。そして、この発見を取り込んでいくことで、事業の定義は更に磨きあげられたり、組み替えられたりする。

プロセスとしての競争は、産業の枠組みをダイナミックに組み替えていくプロセスとなる。このとき、企業は、臨機応変なマーケティングマネジメントの切り替えと、マーケティングマネジメントに通じた産業の枠組みの再構築という、2つの次元にまたがる問題に対応していかなければならない。

プロセスとしての競争は、事業の強みと弱みが反転するプロセスとなる。これまで、企業が自社の優位性を確保するために築き上げてきた経営資源が、新しい状況への適応を妨げる要因となってしまうことがある。このような企業の戦略的行動が引き起こすジレンマを「戦略的ジレンマ」と呼ぶ。

(Ex)ビール産業
キリンビールのラガービールが当初60%を超える市場シェアを取っていた。しかし、ラガービールの成功は、キリンの競争優位の源泉であったと同時に、移動障壁の源泉でもあった。2位以下の企業は、ラガー以外の製法で、ジレンマを突こうとした。1980年代の後半に、アサヒスーパードライを発売され、その結果、ラガービールは細分化されたカテゴリーの1つに成り下がり、アサヒがトップになった。10年後には、今度は、アサヒが同様の戦略的ジレンマに陥ることになる。サントリーが開発し、キリンが参入した発泡酒市場がビール市場のシェアを食い始めた。本格的なビールを訴えていたアサヒは参入が遅れた。かつて、キリンが直面したのと同じジレンマにアサヒが直面することになったのである。

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