2009年8月7日金曜日

マーケティング組織

組織デザインの要件

組織をデザインする時に考えなければならない基本要件は3つある。

1つは、組織の諸活動をどのくらいまで役割(職務)として「分業」させるかという問題である。また、分業する理由は、3つあり、A仕事を単純化する。B仕事の熟練度が高まる。C段取り替えのコストを削減するからである。

2つめは、よく似た機能を結びつけて、どのくらいまでグループ化するかという「部門化」の問題である。
組織が大きくなれば、調整コストが高くなるため、部門化する必要がでてくる。そして、部門化することのメリットは、A関連が強い業務が集まるので、それらの調整が密に行われ、調整が徹底されること。B部門間の調整は、各部門の代表者に委ねることが可能になるため、調整コストが一段と下がる。

3つめは、役割間の指揮命令(意思決定の権限)関係をどのように決定するかという問題である。役割の分業が「組織における横の分業」であれば、指揮命令関係の設定は、「組織における縦の分業」と言える。
意思決定レベルの分業は、「集権化」「分権化」と言い換えることができる。集権化とは、意思決定を組織の上の階層で集中して行うことであり、分権化とは、意思決定の権限を下の階層に委譲することである。つまり、3つめの要件は、集権化と分権化のバランスをどのように取るかと言う事ができる。

集権化された組織は、トップマネジメントで集中的に意思決定が行われるので、部門間やグループ間での調整をきちっと行うことができる。集権化が適しているのは、変化の少ない環境のもと、仕事の安定性や正確性、信頼性を追従していく場合だと考えられる。

分権化された組織では、権限委譲により、現場に近いところで意思決定が行われるので、市場や技術の変化にすばやく対応することができる。だが、分権化し過ぎると部門間での調整が困難になる。分権化が適しているのは、流動的な環境のもとで、仕事の迅速さや柔軟性、創造性を追求していく場合である。

マーケティング組織の発展プロセス

営業、広告、市場調査、製品開発などの業務を遂行するマーケティング組織の構造は、時代を経て変化してきた。製造部門を中心とした単一職能組織から、販売業務が部門化し、細分化していくことで、現代のマーケティング組織は出来上がっていった。

①製造部門を中心とした単一職能組織
20世紀初頭の供給不足の経済において、不足する生活必需品をいかに安価で提供できるかとうい課題に取り組んだ。大量生産方式は、こうした取り組みの中から生まれ、製造部門を中心とした単一職能組織を採用していた。また、この組織の特徴は、マーケティングや販売は、製造活動の付随的なものと捉えられていたため、マーケティング業務が、財務会計、製造部門などに分散している。(組織図はp123)

②マーケティング業務の分業化、専門化
やがて経済が発展し、供給力不足が解消すると、逆に需要が不足してくる。市場は売り手市場から買い手市場へ移る。その中で2つの重要な変化が起きる。1つは、企業におけるマーケティング業務のさらなる分業化であり、2つめは、その結果として起こる統合化の動きである。(組織図はp124)

③マーケティング業務の統合化
専門化と共にマーケティング業務の統合化が起こる。専門化により、それぞれの業務は独立した部署に委ねられるようになった。また、マーケティング業務の専門化と同時に、それらを統合するために、階層的な組織構造が採用されている。(p125)


マーケティング業務の専門化と統合化

現代の企業に見られる組織デザインの骨格は、「職能志向の組織」「市場志向の組織」という2つの基本型を組み合わせることによって成り立っている。

①職能志向の組織
営業、広告、市場調査、製品開発といった担当する業務あるいは、職能別の部門に分割することができ、職能に基づいて分割編集さえた組織を職能別組織と呼ぶ。また、以下の利点がある。
A職能がひとまとまりになり、マーケティング組織内での業務の重複を排除できる。B各職能における規模の経済を追求できる。C職能が専門化することで専門的な技能を深めることができる。D部門がおおきくなれば内部でのより専門的な分業が可能になる。
メリットは多くあるが、職能志向が通用するのは、企業が取り扱う製品サービスの数が少なく消費者ニーズの多様性が乏しい場合、消費者ニーズが変わることなく安定している場合である。

②市場志向の組織
職能志向の限界を克服するためには、職能別の縦割りではなく、製品、サービス、販売地域、あるいは顧客と言った対象市場との接点に注目して、編成された組織を市場志向の組織と呼ぶ。製品カテゴリー別は、食品メーカーであれば、乳製品、調味料、冷凍食品といったカテゴリー分野毎に担当者を置く。販売地域、顧客別の組織の典型は、カルビーで、日本を7つの地域に分けて、それぞれの地域ごとに事業部を置いている。顧客別の組織は、例えば、ある大手食品メーカーは、業務用部門と一般消費財部門に分けている。取引先が違えば、ニーズも大きく異なるため、顧客別の組織を採用している。


マーケティング組織のトレードオフ

職能志向の組織と市場志向の組織にはトレードオフの関係がある。市場志向の組織では、職能志向の組織の限界を超える利点が多くあるが、問題点もある。1つは、企業の中で類似した業務が重複して行われたり特定の地域や顧客の要求に過剰反応してしまったりしやすい。2つめは、職能単位での規模の利益や専門的な技能の蓄積という点でも犠牲が生まれる。業務間の調整が容易になる代わりに、業務の集中化や専門化というメリットが犠牲になる。

市場志向の組織の基本類型

①事業部制組織

市場志向の組織の原理に最も忠実な組織タイプだと言える。製品、サービス、販売地域、顧客などを括りとして、事業部と呼ばれる組織単位を設定し、この事業部の中に関連する職能をを配置し、自己充足単位化をはかるというものである。事業部制組織を考える時に、第一に考えなければならないことは、事業部のくくりとなる事業分野を何を中心に定義するかという問題である。第二の次元は、企業の全ての業務を事業部に配分するのか、それとも一部の業務は本社に残すのかという問題である。

事業部制の限界

1つは、業務の専門性を高めることが困難になることが挙げられる。そのため、実際は、事業部に組み込む業務範囲を限定するなどしている。2つめは、生産設備や研究開発に関する投資が複数の事業部で重複して行われたり、事業部間での広告イメージが散漫になるなどの問題がある。3つめは、市場環境や企業全体の経営方針の変化により、事業の括りそのものを見直そうとする場合にも事業部制組織は難点がある。

②プロダクトマネージャー制度

職能別組織に横ぐしをさすように特定の製品の責任者が営業や広告、市場調査や製品開発、さらには、生産や調達、研究開発などの各部門の調整を行い、その製品に関する全体的な業務の進行を統括するというものである。

③マトリックス型組織

PM制度の限界は、開発や工場の営業の各部門に対して直接の権限を持たないことである。PMに自らの資源を自由に用いる権限を与えようとしたのが、マトリックス組織である。マトリックス型組織は、言わば、組織を統括する1つの軸を「事業分野」とし、もう1つの軸を「職能」とすることで、事業分野と職能で2元的に組織を編成するというものである。つまり、製品別、顧客別といった事業のくくりで職能を統合する一方で職能単位でも企業全体にまたがる調整や配置が行われる。
ただし、難点がある。1つは、二重の命令系統が存在することである。2つめは、多数のマネージャーが必要になるためコストがかかるという問題がある。

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