2009年8月7日金曜日

マーケティング資源の配分(PPM分析)

企業は、今日の効率性と明日の成長性をバランスさせながら複数の製品(事業)を組み合わせ、そこから最大かつ、安定した収益を得ようとする。これを製品ポートフォリオと呼ぶ。

何が事業の収益性を決めるのか?

事業の資源配分について考えることの重要性を明らかにした古典的研究プロジェクトに、PIMS(Profit Impact Of Market Strategies)プロジェクトがある。文字通り、市場戦略が収益にどのような影響を与えるかを明らかにすることを狙いとした。プロジェクトが始まった背景は、複数の製品や事業を持つ企業が増えてきたこと、製品や事業のライフサイクルのスピードが速くなってきた、多くの産業が成長期から成熟期へ移行し、総花的な資源配分では、企業の存続や成長が危ぶまれるようになったことが挙げられる。
PIMSプロジェクトの成果として、大きなものは、相対市場シェアが高くなると、投資収益率とキャッシュフローのいずれも増加するというものだった。


なぜ市場シェアが大きくなると収益性が高まるのか?

市場シェアと利益率の間に正の関係が見られるのは、市場シェアの増大によって様々な間接的メカニズムが働き製品サービスの単位あたりコストが低下するからだと考えられる。そのメカニズムとは以下の2点である。

①規模の経済性

事業の規模が拡大するにつれて、製品サービスの単位当たり生産コストが低下することをいう。もちろん、この関係は永遠に続くわけではなく、どこかで臨界点に達するが、生産拠点や活動単位を分割することで、乗り越えられる問題である。また、規模の経済性が起こる要因は以下の通りである。

A設備の大規模化。B間接費負担の軽減。C調達コストの低下である。

②経験効果

経験を積んだ集団のほうが、その仕事の経験が少ない集団よりも、効率的な仕事を行うことができるという効果である。経験効果は、累積生産量を代理指標とすることで数値化できる。一般的に、累積生産量が2倍になるごとに、単位当たりコストが10~30%低下するという関係が見られると言われる。経験効果を生み出す主要な要因は以下の通り。

A習熟を通じた能率の向上。B生産工程や生産設備の改善。C投入要素の変更。D製品の設計変更。
また、規模の経済と経験効果には重要な相違点がある。生産コストの低下が、規模の経済では、生産量という関数に対して、経験効果では、累積生産量の関数となる点である。つまり、前者は、スタティック(静学的)なものであり、後者は、時間の流れで生じるダイナミックな現象である。


規模と経験効果を活かしたマネジメント

①市場シェアの拡大がもたらす好循環

→業界最大シェア→業界最大の累積生産量→規模、経験効果→業界最低の平均コスト→業界最低の価格レベル→

②市場シェアを拡大する時期の限定

→規模、経験効果はある程度までいくと効果は乏しくなるため、市場シェアの拡大によるコスト削減効果が低減し始めたとき、市場シェア拡大を至上命題とするマーケティング目標を変更する時である。このように、規模や経験効果が働く事業では、市場シェアの拡大を至上命題とする時期と、シェアよりも利益を追求する時期に分けて考えることが必要である。

③経験の蓄積を進行させるための組織デザイン

→自社のスタッフが一定の作業を反復して経験するように組織や作業工程のデザインを工夫することによって、経験効果をより享受できる。

④革新的な製品、製法の戦略的な活用

→低シェア企業が、高シェア企業の優位性を切り崩していくポイントが明確になる。つまり、既存の製品、製法のもとで蓄積された経験を無効にするような状況を作り出すことである。その鍵となるのが、製品や製法のイノベーションである。


製品ポートフォリオ管理

製品(事業)間の資源配分を検討する際に使われるのが、製品(事業)ポートフォリオ管理(PPM)である。製品間の資源配分を行うには、1つ1つの製品について、投資を続けるべきか、撤退すべきか、あるいは、投資を続けるなら、どのくらいの水準の投資を行うのかを決めなければならない。PPMは、この意思決定を統一的な枠組みのもとで行うための手法を提供してくれるのである。


PPMの考え方

上記で記述したように、市場シェアと利益率には相関関係があり、市場シェアの大小は、事業のコスト面に重大な影響を及ぼす。このように、自社に事業の市場シェアと市場の成長率を把握することで、その事業にどれだけの資金が必要で、どれだけの資金がその事業から得られるのかということについて、おおよそのめどを得ることができる。
縦軸に、市場の成長率、横軸に、市場シェアのマトリックスを作ることで、製品ポートフォリオを捉えるための枠組みが出来上がる。そこで出来る4つのセルを以下で説明する。


①金のなる木(事業利益/資金供給/シェア維持orシェア刈り取り)

第3象限に位置する事業群は、市場シェアが高く、市場成長率は低い。したがって、利益率は高い。また、この状況では、成長率が低く、多額の投資が必要ないため、資金流入が多く、流出が少ないために、余剰資金が生じる。おそらく、資金が不足している他の事業へ、余った資金を供給することができるはずである。

②問題児(成長or撤退/次世代のスターor資源移転)

第1象限に位置する十行軍は、金のなる木と対照的で、市場シェアが低いため資金流入量が少ないが、市場成長率が高いため、資金流出量は多い。したがって、資金バランスの悪い事業と言える。その後は、撤退して赤字の累積を防ぐか、多額の投資を行い市場シェアを拡大し、バランスを取るのか選択しなければならない。

③スター(市場シェア/成長(次世代の資金供給)/シェア獲得)

①と②の中間にある事業群は、スター、負け犬と呼ばれ、第4象限に位置するのはスターである。スターは、市場成長率が高く、多額の投資が必要となる半面、市場シェアが高く利益率も良いので実入りも多く、活気のある事業である。企業の将来の発展の可能性を担う期待の星である。

④負け犬(撤退/余剰資金の移転/シェア刈り取り)

第2象限に位置する事業は負け犬と呼ばれ、敗退を余儀なくされた事業である。利益率は低く、資金流入は少なく、将来大きく成長する可能性も低いので、新たな投資も必要ない、可もなく不可もない事業である。

PPMの活用(HOW)

①全社的な資源配分を行う際の枠組みとなる。

→PPMを用いることで、統一的な視点で、製品間の資金の流れをデザインできるようになる。例えば、資金が余る「金のなる木」から、資金が慢性的に不足する「問題児」あるいは、「スター」に資金が移転される。

②事業ごとの目標を明らかにする。

→例えば、金のなる木では、いっそうのシェア拡大は望まれないだろう(市場シェア維持戦略)。また、ある程度はシェアを犠牲にして、利益創出が求められる場合もある。

以上のように、企業は、PPMを導入することで、単一の事業では解決できない問題を複数の事業の組み合わせと、その資源配分によって解決できるのである。


PPM導入理由(Why)

①成長と資金管理のバランスを取る。

→GEのマーケティング近視眼の回避を行った結果、マーケティング遠視眼に陥り、資金需要が高まり、資金不足に陥った。

②長期と短期の経営目標を調和させる。

→PPMは、適正な資金管理をしつつ成長をはかるための手法である。金のなる木で収益を確保する一方、未来を支える成長候補として、スターや問題児に投資することで、長期の課題と短期の課題を調和させることができる。

③変化に対応する。

→PPMを導入することで、変化の激しい市場環境に対する企業組織の対応能力が高まる。

④現場と本社の対話を促す。

PPMは、現場の判断と本社の投資判断との食い違いを浮き彫りにし、その解決に向けた健全な対話を促すものである。

マーケティング組織

組織デザインの要件

組織をデザインする時に考えなければならない基本要件は3つある。

1つは、組織の諸活動をどのくらいまで役割(職務)として「分業」させるかという問題である。また、分業する理由は、3つあり、A仕事を単純化する。B仕事の熟練度が高まる。C段取り替えのコストを削減するからである。

2つめは、よく似た機能を結びつけて、どのくらいまでグループ化するかという「部門化」の問題である。
組織が大きくなれば、調整コストが高くなるため、部門化する必要がでてくる。そして、部門化することのメリットは、A関連が強い業務が集まるので、それらの調整が密に行われ、調整が徹底されること。B部門間の調整は、各部門の代表者に委ねることが可能になるため、調整コストが一段と下がる。

3つめは、役割間の指揮命令(意思決定の権限)関係をどのように決定するかという問題である。役割の分業が「組織における横の分業」であれば、指揮命令関係の設定は、「組織における縦の分業」と言える。
意思決定レベルの分業は、「集権化」「分権化」と言い換えることができる。集権化とは、意思決定を組織の上の階層で集中して行うことであり、分権化とは、意思決定の権限を下の階層に委譲することである。つまり、3つめの要件は、集権化と分権化のバランスをどのように取るかと言う事ができる。

集権化された組織は、トップマネジメントで集中的に意思決定が行われるので、部門間やグループ間での調整をきちっと行うことができる。集権化が適しているのは、変化の少ない環境のもと、仕事の安定性や正確性、信頼性を追従していく場合だと考えられる。

分権化された組織では、権限委譲により、現場に近いところで意思決定が行われるので、市場や技術の変化にすばやく対応することができる。だが、分権化し過ぎると部門間での調整が困難になる。分権化が適しているのは、流動的な環境のもとで、仕事の迅速さや柔軟性、創造性を追求していく場合である。

マーケティング組織の発展プロセス

営業、広告、市場調査、製品開発などの業務を遂行するマーケティング組織の構造は、時代を経て変化してきた。製造部門を中心とした単一職能組織から、販売業務が部門化し、細分化していくことで、現代のマーケティング組織は出来上がっていった。

①製造部門を中心とした単一職能組織
20世紀初頭の供給不足の経済において、不足する生活必需品をいかに安価で提供できるかとうい課題に取り組んだ。大量生産方式は、こうした取り組みの中から生まれ、製造部門を中心とした単一職能組織を採用していた。また、この組織の特徴は、マーケティングや販売は、製造活動の付随的なものと捉えられていたため、マーケティング業務が、財務会計、製造部門などに分散している。(組織図はp123)

②マーケティング業務の分業化、専門化
やがて経済が発展し、供給力不足が解消すると、逆に需要が不足してくる。市場は売り手市場から買い手市場へ移る。その中で2つの重要な変化が起きる。1つは、企業におけるマーケティング業務のさらなる分業化であり、2つめは、その結果として起こる統合化の動きである。(組織図はp124)

③マーケティング業務の統合化
専門化と共にマーケティング業務の統合化が起こる。専門化により、それぞれの業務は独立した部署に委ねられるようになった。また、マーケティング業務の専門化と同時に、それらを統合するために、階層的な組織構造が採用されている。(p125)


マーケティング業務の専門化と統合化

現代の企業に見られる組織デザインの骨格は、「職能志向の組織」「市場志向の組織」という2つの基本型を組み合わせることによって成り立っている。

①職能志向の組織
営業、広告、市場調査、製品開発といった担当する業務あるいは、職能別の部門に分割することができ、職能に基づいて分割編集さえた組織を職能別組織と呼ぶ。また、以下の利点がある。
A職能がひとまとまりになり、マーケティング組織内での業務の重複を排除できる。B各職能における規模の経済を追求できる。C職能が専門化することで専門的な技能を深めることができる。D部門がおおきくなれば内部でのより専門的な分業が可能になる。
メリットは多くあるが、職能志向が通用するのは、企業が取り扱う製品サービスの数が少なく消費者ニーズの多様性が乏しい場合、消費者ニーズが変わることなく安定している場合である。

②市場志向の組織
職能志向の限界を克服するためには、職能別の縦割りではなく、製品、サービス、販売地域、あるいは顧客と言った対象市場との接点に注目して、編成された組織を市場志向の組織と呼ぶ。製品カテゴリー別は、食品メーカーであれば、乳製品、調味料、冷凍食品といったカテゴリー分野毎に担当者を置く。販売地域、顧客別の組織の典型は、カルビーで、日本を7つの地域に分けて、それぞれの地域ごとに事業部を置いている。顧客別の組織は、例えば、ある大手食品メーカーは、業務用部門と一般消費財部門に分けている。取引先が違えば、ニーズも大きく異なるため、顧客別の組織を採用している。


マーケティング組織のトレードオフ

職能志向の組織と市場志向の組織にはトレードオフの関係がある。市場志向の組織では、職能志向の組織の限界を超える利点が多くあるが、問題点もある。1つは、企業の中で類似した業務が重複して行われたり特定の地域や顧客の要求に過剰反応してしまったりしやすい。2つめは、職能単位での規模の利益や専門的な技能の蓄積という点でも犠牲が生まれる。業務間の調整が容易になる代わりに、業務の集中化や専門化というメリットが犠牲になる。

市場志向の組織の基本類型

①事業部制組織

市場志向の組織の原理に最も忠実な組織タイプだと言える。製品、サービス、販売地域、顧客などを括りとして、事業部と呼ばれる組織単位を設定し、この事業部の中に関連する職能をを配置し、自己充足単位化をはかるというものである。事業部制組織を考える時に、第一に考えなければならないことは、事業部のくくりとなる事業分野を何を中心に定義するかという問題である。第二の次元は、企業の全ての業務を事業部に配分するのか、それとも一部の業務は本社に残すのかという問題である。

事業部制の限界

1つは、業務の専門性を高めることが困難になることが挙げられる。そのため、実際は、事業部に組み込む業務範囲を限定するなどしている。2つめは、生産設備や研究開発に関する投資が複数の事業部で重複して行われたり、事業部間での広告イメージが散漫になるなどの問題がある。3つめは、市場環境や企業全体の経営方針の変化により、事業の括りそのものを見直そうとする場合にも事業部制組織は難点がある。

②プロダクトマネージャー制度

職能別組織に横ぐしをさすように特定の製品の責任者が営業や広告、市場調査や製品開発、さらには、生産や調達、研究開発などの各部門の調整を行い、その製品に関する全体的な業務の進行を統括するというものである。

③マトリックス型組織

PM制度の限界は、開発や工場の営業の各部門に対して直接の権限を持たないことである。PMに自らの資源を自由に用いる権限を与えようとしたのが、マトリックス組織である。マトリックス型組織は、言わば、組織を統括する1つの軸を「事業分野」とし、もう1つの軸を「職能」とすることで、事業分野と職能で2元的に組織を編成するというものである。つまり、製品別、顧客別といった事業のくくりで職能を統合する一方で職能単位でも企業全体にまたがる調整や配置が行われる。
ただし、難点がある。1つは、二重の命令系統が存在することである。2つめは、多数のマネージャーが必要になるためコストがかかるという問題がある。

2009年8月2日日曜日

流通、プロモーション戦略

マーケティングマネジメントにおいて、開発の局面を「価値形成」、普及の局面を「価値実現」と呼んでいる。「価値実現」における、「流通」「プロモーション」の問題を取り上げる。流通とプロモーションは、開発された製品サービスを広く社会に普及させることに関わる。

企業が産出した製品サービスが、顧客の手元に渡るまでの流通経路は流通チャネルと呼ばれる。

流通チャネルの機能

①物流
工場で生産された製品が倉庫や店舗を経由しながら最終的な顧客の手元へと配送されていくことである。物流は作り手と買い手との間で生じる空間的、時間的ギャップを埋める役割を果たす。

②情報流
保管や輸送をスムーズに行うには、さらに、情報の流れ、すなわち、「情報流」もマネジメントしなければならない。作り手と買い手のの間にある様々なギャップを解消しなければならない。例えば、製品の保管や輸送を効率的に行うには、正確な受発注情報のやり取りが不可欠である。また、販売予測の精度を上げることも重要である。近年では、情報システムを導入することで、保管や輸送の管理を一元化し、その精度を向上させようとするサプライチェーンマネジメントの動きが盛んである。

③商流
売買あるいは、取引の流れを「商流」という。流通チャネルを構築する際には、工学的に見ても効率的な物流を構築することは重要であるが、その仕組みに流通業者が介在する場合は、彼らとの取引であるということを忘れてはいけない。取引である以上、相手にとってもメリットのある提案でないといけない。

流通チャネルの類型

流通チャネルの長さ

流通チャネルにはいくつかの類型があり、製品サービスの生産開発を行う生産者、卸売業務や小売業務を行う流通業者、そして保管や輸送を行う物流業者によって構成される。


チャネル①生産者――――――――――――消費者

生産者自ら直接最終的な消費者に販売する方法である。生産者が直営店舗を経営したり、訪問販売、インターネットなどを活用した通信販売を行ったりする方法である。例えば、化粧品業界では、ノエビアやファンケルがこの方法を採用している。

チャネル②生産者――――――小売業者――消費者

生産者が卸売り業務までを兼ねて、販売業務を流通業者に委ねる方法である。化粧品業界では、精度品メーカーの資生堂やコーセーはこの方法を採用している。

チャネル③生産者―卸売業者―小売業者―消費者

生産者は、卸売り業務と小売業務の全てを委ねる方法である。化粧品業界では、一般品メーカーのマンダムや日本リーバはこの方法を採用している。

以上のような流通チャネルの中でどの類型が優れているかは、ターゲットとなる最終顧客、取引先となる流通業者、自社の経営資源などの条件によって異なる。尚、卸売り業務は複数の業者による多段階のネットワークとなる場合がある。特に、小売業者だけでなく生産者、消費者の数が多い場合、多段階化が生じやすくなる。それは、生産者から消費者に商品が届くまでにかかるコストが高くなるので、多段階化することで、コストを分散していると考えることができる。


流通チャネルの幅

チャネルの段階数が決まったなら、各段階で用いられる仲介者数を決定しなければならない。

①排他的流通政策(数は少ない、コントロール強い、高級品など専門品に適している)
流通業者の数を少なくし、厳しく制限される。高級商品などでは、自社ブランドのイメージをコントロールする必要があるため、生産者は特定のエリアにおける仲介業者数を絞り込み、強力なリレーションを築き排他的に製品を販売してもらおうとする。

②選択的流通政策(数は中程度、コントロール中程度、衣料品、家電製品など買回り品
この考え方のもとでは、取引を希望する仲介業者の中からいくつかが選択される。重要度の低い仲介業者は選択せず、選択したメンバーと良好な関係を構築しようとする。

③開放的流通政策(数は多い、コントロールは弱い、スナック菓子、日用品など最寄品
できる限り多くの仲介業者との取引が進められる。チャネル数が増えすぎると、値崩れが進んだり、既存チャネルとの軋轢が生まれたり、ブランドイメージが低下するため、やがて顧客からの支持を失うことになりかねない。

流通チャネルの深さ(統合)

垂直的マーケティングシステム

各チャネルメンバーは互いに独立した存在であるため、各メンバーは自らの利益を優先させるため、チャネル全体の効率が損なわれやすい。これに対して、各業者が統合されたシステムとして機能するチャネルのことである。

①企業型VMS(コントロール、投資負担、リスク
複数の段階が、特定の企業資本によって、統合されている場合である。例えば、ナイキや花王などの製造業者は、独自の卸売り部門や販売部門を運営している。

②契約型VMS(コントロール、投資負担、リスク
チャネルにおける複数の段階が契約によって統合されている場合である。共同出資により、事業体を組織し、卸売りや生産活動を展開するコーペラティブチェーン、フランチャイザーというチャネルメンバーのもとに統合されたフランチャイズチェーンなどがある。

③管理型VMS(コントロール、投資負担、リスク
ある特定のチャネルンバーのパワーによってチャネルの各段階が調整されている場合である。圧倒的な市場シェアを持つ製造業者や、膨大な販売力を持つ小売業者が自らの強大なパワーによってチャネルを統合することができる。

流通チャネルのデザイン(意思決定問題)

チャネルをデザインする際に、自社で構築(統合)するのか?他者に委ねるのかを検討しなければならない。それでは、なぜ、生産者は自社の製品サービスの販売を流通業者に委ねるのだろうか?それは以下のメリットがあるからである。

①消費の小規模分散性への対応
製品サービスの生産の拠点は、特定の場所に集約されるが、製品サービスの消費は、地理的に広い範囲で分散して行われるため、個々の買い手の購買力は、生産規模に比べてはるかに小規模であり、この小規模分散性に対応しなければならない。この時、全国津々浦々に点在している流通業者を活用することで対応できる。

②資金調達とリスクの負担の軽減
小規模分散性に対応するために、多数の販売拠点を構えなければならず、自社で構築するには莫大な費用が必要になるため、既存のネットワークを活用すれば費用が抑えられる。

③スピーディーな展開
流通業者を自社で構築するには、資金の問題に加えて、スピーディーな対応という点でも問題がある。
④社会的品揃えの実現
生産者が生産される商品のみを販売する店舗は消費者にとって魅力的だとは言えない。流通業者に委ねることで、消費者にとって魅力的な品揃えを形成できる。

⑤取り引数節約
製品サービスの販売を生産者と消費者が直接行う場合、複数の生産者と接触しなければならないが、流通業者が介在すれば、品揃えが形成されているため、1度の接触で商品の比較検討、購入ができる。つまり、取り引数が節約される。

逆にデメリットは、店頭での販売価格、販売方法をコントロールする権限販売データを収集する権限、売れ行きを見て店舗間で商品を入れ替える権限、販売における収益の一部を断念することに繋がる。

以上のことを考慮にいれ、多くの企業は、流通業者を全面的に流通業者に委ねるのではなく、自社で管理する部分と、委ねる部分を混在させるパターンが多い。

また、統合か取引かのトレードオフに関しては、取引対応
(http://maki-jun77.blogspot.com/2009/08/blog-post_11.html)で扱っている。


プロモーション

メッセージの選択

製品サービスが購買されるためには、流通の問題に加えて、その情報が買い手に行き渡っていなければならない。プロモーションは、製品サービスにかかわる情報を多数の人々に向けて発信する活動である。優れたプロモーションを展開するためには、活動の戦略的なデザインが必要となる。基本的に2つの問題を考慮しなければならない。

①何を伝えるのか(メッセージとして何を語るか)の選択
②どのように伝えるか(メディアをどのように組み合わせるか)の選択


プロモーションのメッセージを導き出すための主要な視点

①製品サービスの特徴そのものの特徴をとらえる。
→製品サービスの名称、属性、便宜、イメージ、理念など。
②製品サービスと顧客との関係をとらえる。
→用途や使用シーン、ターゲットとしている顧客のタイプなど。
③製品サービスを提供する企業の特性を伝える。
→製品技術、生産技術、経営理念、歴史など。
④他社の製品サービスとの競争関係をとらえる。
→競合する製品に対する優位性、差別性など。

メッセージの戦略的な戦略

戦略的に優れたメッセージを選択するには、そのメッセージが以下の3つのポイントを満たしていることを検討すべきである。

①ターゲットとなる買い手に対する訴求力がある。
②競争相手が模倣することの困難な優位性が確立される。
③マーケティングミックスの他の要素との整合が取れている。

メディアの選択~プロモーションミックスの構成要素~

メッセージを戦略的に策定することに加え、策定したメッセージをどのように人々に伝えていくかを考えなければならない。その手段は以下の4つのメディアがあり、プロモーションミックスと総称される。

①広告活動(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、ポスター、看板、DM、インターネット、折込み広告)
→多くの人々の視聴するメディアや、多くの人々の集まる場所に時間やスペースを確保し、料金を支払って自社の製品サービスの情報を提示する活動である。現在では、テレビ、新聞、雑誌などのマスメディアを用いた広告が主流だが、インターネットのポータルサイトやイベント会場などのメディアもある。

②PR活動(プレス、学会、協賛、年次報告書、社内報、財界活動)
→広告活動と異なり、間接的にメディアを利用するものである。PR活動の中心は、テレビ、新聞、雑誌などの番組や記事として取り上げられることを狙った様々な情報提供活動である。PR活動は、信頼性が高いという利点があるが、企業が発信したいメッセージをコントロールできないところがデメリットである。

③人的販売(販売員による商品説明、推奨、カウンセリング販売)
→人的販売は、営業担当者や販売員など人を介した顧客との直接的な会話を通じて情報を提示する活動である。生産財を扱う企業は、人的販売がプロモーションの中心になることが多い。

④セールスプロモーション(クーポン、おまけ、懸賞、サンプル配布、商品展示、小冊子、見本)
→製品サービスにかかわる情報を伝えるための活動で上記の3つに属さない活動の総称である。製品サービスを直接見たり、触ったり、使ったりする経験を与えることで、製品に対する理解度を高めようとする活動が数多く含まれる。

統合化されたマーケティングコミュニケーション

上述したプロモーションミックスは、企業が人々に製品サービスに関わる情報を伝達するための中心的な手段であるが、伝達手段は、プロモーションミックスに限定されるわけではない。
製品の素材やデザイン、店舗の立地やインテリア、標準的な価格帯や値引き率などを通じても、製品サービスの在り方は伝わっていく。このようなプロモーションミックスの範疇を超えたマーケティングミックスの諸要素を総動員したコミュニケーションを「統合型マーケティングコミュニケーションIMC(Integrated Marketing Communications)」と呼ぶ。

(Ex)無印良品やザボディショップのようなコンセプトショップでは、店舗の雰囲気、陳列、価格帯、包装紙のデザインを通じて、人々は無印良品やボディショップとは何かを感じとることができる。

また、IMCが発展した要因として、マス広告の地位低下、インターネットの発達、広告効果に対する説明責任の高まりが挙げられる。現在のIMCは、単なるMCの統合ではなく、真の顧客視点で統合が進められている。

製品、価格戦略

第一章で提示したマーケティングマネジメントのエッセンスは、製品、価格、流通、プロモーションを内的、外的に整合化するという考え方である。ここでは、製品、価格に関わるマーケティングの主要な問題を検討する。

①製品、サービス(product)とは何か?

顧客が抱えている問題を解決すると考えることができる。マーケティングでは、製品サービスを顧客との関係で捉えるので、このとき、製品サービスは、顧客の抱えている問題を解決する「便宜の束」としてデザインされる。

(EX)コカコーラの買い手は、コーラの物理的特性というよりは、「喉の渇きを癒す」「爽快な気分を味わう」と言った便宜を手に入れようとしているのである。 自動車の買い手は、「スムーズな移動」「快適な空間」「自分らしさの表現」を手に入れようとしている。 ホテルは、「快適な眠り」「贅沢な時間」「旅先での連絡の場」 。

以上で挙げたのは、製品サービスを使用する局面における便宜である。だが、便宜の束を捉えるには、もう少し視野を広げるべきである。すなわち、顧客にとって製品サービスとは、認知し、取得し、使用し、廃棄するものである。したがって、製品サービスに対する顧客の評価は、使用時だけのパフォーマンスで決まるわけではない。

製品サービスの構成要素

顧客は、基本的に製品、サービスそのものを必要として購買を行うのだが、そのためには、パッケージングや、アフターサービスといった付加的な要素が不可欠な場合がある。例えば、シャンプーは、パッケージングのおかげで、セルフサービス形式の店舗で購入できるし、ルームエアコンなど、取り付けサービスが必要な商品もある。

このように、付加的な要素も含めて、製品サービスを捉えることで、企業が顧客に提供しようとしている便宜を、より包括的に検討しデザインすることができる。また、販売する際には、付加的な要素をセットにして販売するのか(バンドリング)、別々の製品サービスとして販売するのか(アン・バンドリング)という問題についても検討しなければならない。

新製品、サービスの開発プロセス

優れた技術を開発することと、それを製品、サービスとして市場に送り出すことの間には大きな隔たりがある。この両者の隔たりを埋めるのが、新製品、サービスの開発プロセスである。以下の手順で行われる。

Aアイデアの創出・・・まず優れたアイディア候補を数多く蓄積することが望ましい。
Bコンセプトの開発・・・アイディアを買い手が製品サービスとして欲しがる「コンセプト」へと変換する。
C技術収益性計画・・・便宜の束を製品として具体化するためには、技術的裏づけが必要である。
D製品サービス設計・・・製品コンセプトに合致した製品サービスを生産するためのマニュアル作成。
E要素技術開発・・・・・・・新たに必要な部品や技術を自社で調達する場合は、その設計が必要。
F工程設計と生産準備・・他企業から調達する場合は、具体的交渉し、試作品作成。
G市場導入・・・・顧客との関係を創り出すために、価格、チャネル、プロモなど様々な手法が動員される。

開発における組織デザイン

A新製品サービスの開発プロセスは、直接的に進行するわけではない。
B開発ステップは、並行的に進行する。
C開発プロセスでは、組織的な協働がが重要となる。
D開発は、組織に開発能力を蓄積するプロセスでもある。


アソートメントのデザイン

多くの企業は、同時にいくつもの製品サービスを提供している。この群としての製品サービスのラインナップをどのように組み立てるのかを考えなければならない。こうした組み立てを「アソートメント」という。
アソートメントは、企業が扱っている製品サービスをラインの数(カテゴリーの数)と、各ライン内のアイテムの数とによって捉えることができる。前者を、ラインの広がり、後者をラインの奥行きという。(P65)

また、アソートメントを考える時には、以下の2つの問題を検討する必要がある。

①新製品サービスは、自社のアソートメントの中でどのような位置付けか?
②新製品サービスは、単一のアイテムで市場に導入するのか、それとも複数のアイテムからなるラインとして市場に導入するのか?

アソートメントの優位性

アソートメントの全体的な構成に関しても内的外的一貫性を確立しなければならない。重要なことは、アソートメントに着目することで、個別の製品サービスを開発するだけでは解決できない問題への対応が可能になることである。つまり、アソートメントの巧みな構成がビジネスの機会を拡大するのである。

(EX)トヨタ自動車は、価格の異なる多様なモデルを生産することで、多様な顧客に対応できるだけでなく、買い替え時に、顧客がより高価格の製品にグレードアップするように誘導することができる。(クラウン→レクサスetc)


②価格の役割

なぜ価格のデザインを行うのか?
顧客との関係を創造維持するためには、企業は製品サービスの開発、改善に加えて、価格のデザインにも取りくまなければならない。いかに優れた製品であっても、価格が適切でなければ購入されない、また、価格の設定を通じて製品に対するプロモーションの効果を高めたりできる。
一般的には、価格デザインは、製品サービスの価格をどの水準に設定するかという問題である。生産に同じ費用がかかる製品サービスであっても、価格を高くすれば良い場合もあれば、低くする方が良い場合がある。

基本的価格設定

(A)コストに基づく価格設定

◎コストプラス法
一定の利益率をコストに上乗せして価格を設定する。
◎損益分岐点を用いた価格設定
損益分岐点とは、販売数量が増加していくことによって、赤字の状態から利益が生まれる黒字に変わるまさに分岐点であり、分岐点を用いて価格の設定を検討する。

(B)需要に基づく価格設定
売り手のコストではなく、需要面=ベネフィットに対する買い手の知覚に基づく。

(C)競争に基づいた価格設定
競合製品つけられている価格にあわせて設定。実勢価格は、市場での力関係やブランドイメージが加味されるので、競争製品より高価格に設定する場合もあれば、低価格に設定することもある。


戦略的価格デザイン

マーケティング担当者は、様々な状況の中で、適切な価格水準を見極め、その実現に向けて様々な活動に取り組むことを求められる。この時、担当者が検討すべき3つの関係がある。

A需要の価格弾力性

製品サービスは、高すぎても、低すぎてもいけない。高すぎれば需要が見込めない価格になるし、低すぎれば、利益が見込めない価格になるからである。この上限と下限を認識することが価格設定の出発点である。

需要の価格弾力性とは、価格の変動に対する需要の反応の度合いのことである。価格の変動に対する需要がほとんど変化しないことを価格弾力性が低い、非弾力的といい、大きく変化することを価格弾力性が高い、弾力的であると言う。

価格の弾力性に大きな影響を及ぼすのが、「代替的な製品サービスの有無」である。代替製品が多くあれば、価格を引き上げると需要の多くが代替製品に流れてしまう。逆に価格を下げると、需要を吸引することで、販売量を大きく伸ばすことができる。

(EX)マクドナルドが、「平日半額セール」を開始し、130円→65円に値下げしたのである。その時、ハンバーガーの販売額が4.8倍に増加し、売上額は倍増した。これは、ハンバーガーが価格弾力性が高いために、価格を大幅に下げることで需要が増加した典型例である。

B価格に依拠した価値の推定

上記とは逆に、価格を引き上げることで需要が増大することがある。製品サービスの効能や機能が分かりにくい場合に行われやすい。価格が高いことは、製品サービスが優れた機能や効能を備えていることの代理指標となる。そのため、場合によっては、価格を高くした方が、購買が促進される現象が起こる。

(EX)クラッシックコンサートのチケットの価格を引き上げたところ、かえって客足が伸びたという事例がある。それは、買い手が価格を拠りどころとして、サービスの品質を推定しているからだと考えられる。つまり、価格に依拠した価値の推定が行われたのである。また、ルイヴィトンなどのブランド品も同じと考えられることができる。

Cマーケティングミックスとの連動

需要の価格弾力性は、長期的に見た時、固定的で動かしにくい前提ではなくなる。企業は、様々なマーケティングの手法や活動を通じて、自らが直面する需要に影響を及ぼすことができる。なぜなら、マーケティング活動には、製品サービスに対する買い手の評価を構成することで、価格弾力性のあり方に影響を及ぼしていく効果があるからである。

加えて、価格のデザインにあたっては、価格がマーケティングミックスのほかのカテゴリーに属する諸要素の働きをサポートするという逆方向の関係も考慮しなければならない。例えば、ディズニーランドでは、パスポートに高い割引率を適用し、土産品に財布を開くことで、トータルで利益を上げている。

マーケティングミックスとの連動を考慮すると様々な価格設定モデルが考えられる。

①補完的価格設定(製品)
本体製品とは別に、定期的に必要な消耗品が必要な場合、本体は低価格で販売し、消耗品の利幅を大きくすることで、トータルで利益を上げるというものである。例えばプリンターとインクである。

②定額制・従量制価格設定(ターゲット)
製品サービスの利用頻度が異なると、顧客にとって魅力的な料金プランが異なってくる。例えば、通信などのサービス事業は、利用のたびに課金する従量制に加え、使用頻度が高い人向けに、使い放題の定額制が採用されている。

③ゾーン価格設定(流通)
空間的に分断された異なる条件の場所に製品サービスを流通させる際に、異なる価格を適用するといったものである。例えば、同じ青果物でもスーパーで日用品として購入する場合と、百貨店で贈答品として販売するのでは、価格弾力性は大きく異なる。これは、飲料品で、スーパーとスポーツスタジアムで販売価格が異なるといった現象と同じである。

④イメージ価格設定(プロモーション)
類似した製品サービスに対してプロモーションや販売店舗や付加的なサービスなどの違いで異なるイメージを確立し、異なる価格で販売するというものである。

その他の価格設定

◎心理面を考慮した価格設定

①端数価格
消費者は、6000円→5980円という価格に対して、最大限に値引きされていると感じる傾向がある。食用品、日用品に多く用いられる。
②威光価格
消費者は品質を判断する基準の1つとして価格を用いることが良くある。そこで品質の高さやステータスを消費者へ訴えかけるために、意図的に高く設定する。例えば、ロレックスなど。価格に依拠した価値の推定と同じ。
③慣習価格
缶入り清涼飲料のように、いくつかの製品においては、社会慣習上定まった価格が設定される。

◎割引
①現金割引

現金で受け取ることにより、早い段階で現金が回収でき資金繰りがよくなるため、金利面やコストで有利になる。
②数量割引
一度に多く購入した買い手には、1単位あたありの価格を引き下げる。
③機能割引
相手によって異なる価格が設定される。多くの機能を遂行する相手には、有利な価格を設定する。
④特売価格、特売季節割引
特売価格を設定することで需要が拡大する。また、季節割引は、需要の少ない時期には、価格を下げ、需要の多い時期には、価格を上げる戦略である。

◎新製品の価格
①上澄み吸収価格(スキミング)・・・早期に利益を得る。
②市場浸透価格(ぺネトレーション)・・・早期に市場シェアをとる。

マーケティングマネジメント

マーケティングとは?

企業が顧客との関係の創造と維持を様々な企業活動を通じて実現していくこと。

マーケティングミックスとは?

マーケティング、すなわち、顧客との関係の創造と維持にあたって、企業が用いる手法や活動の総称、集合。「製品」「価格」「流通」「プロモーション」の4つのカテゴリーに分けて考えられるのが一般的である。また、それぞれの頭文字をとって4Pと言われる。

マーケティングマネジメントとは?

顧客の創造と維持における、4P戦略において、内的に整合がとれるとともに、外部環境とも整合のとれたマーケティングミックスを実現するためのマネジメントである。

なぜ4つのPを用いるのか?

4Pという枠組みを分析に用いることの意義は、①バランスの取れた理解と対応が可能になる。②統合的な認識や実践が生まれることである。

統合を生み出す2つの一貫性(内的、外的)

①内的一貫性

4Pの個々の要素が相互に整合の取れたものになっていること。

(EX)Aプッシュ戦略Bプル戦略

A生産者が高マージンで流通業者に製品を押し込み、さらに流通業者推奨によって買い手に製品を販売するという、川上からのプッシュにより、取引の流れが作られる。

B生産者がマス広告によって直接、書いてに働きかけ、その製品に対する指名買いを発生させる。その結果、川上からのプルによって取引の流れが作りだされる。

このように、Aでは、買い手になじみのない新基軸製品を、価格を高めにして、流通業者へのマージンを確保し、対面販売型の販売網を用い、販売員による、店頭での説明や推奨によるプロモーションを採用することで、プッシュの流れを作るように4P戦略が一貫している。逆に、Bでは、買い手が使用方法を熟知している製品を、低価格にして、流通業者のマージンを削減し、全国チェーンの販売網を活用し、マス広告によるプロモーションを採用することで、プル型の流れを作っている。

②外的一貫性

適切なマーケティングミックスを構成するためには、外的一貫性の問題を検討しなけれればならない。外的一貫性とは、4Pの諸要素が、それらを取り巻くマーケティング環境と整合性を保つことであり、整合性を判断するには、「消費」「競争」「取引」「組織」の4つの問題を検討しなければならない。

A消費対応、競争対応

企業が採用するマーケティングミックスは、顧客となる消費者、企業にとって魅力があり、購買を促すものでなくてはならない。そして、他社との競争の中で優位性がなければならない。

B取引対応、組織対応

マーケティングミックスは実現可能でなかればならない。それが、「取引」と「組織」である。具体的には、取引関係を結ぶことが可能か?自社の組織で実行可能か?を検討しなければならない。

(EX)プル戦略の場合

(消費)相当数の消費者が製品の特性や使用情報を熟知しているか?また、消費者は、スーパーやコンビニの利用頻度が高いか?マス広告によく反応するか?
(競争)類似の製品をプル型で販売している競合他社が存在しないか?また、していても、自社に優位性があるか?
(取引)取引が可能な全国型の流通チェーンが一定数存在するか?
(組織)4Pを実現するために必要な、資金、人材、設備、ノウハウなどが社内に蓄積されているか?


マーケティングマネジメントのプロセス

①マーケティングマネジメントの狙いは、事業を発展させていく上で不可欠な顧客との関係を、創造し、維持していくことである。

②この狙いを達成するためには、マーケティングミックスを統合し、内的一貫性と外的一貫性を実現することが必要である。

基本的な作業フロー

①マーケティング目標の確認
②ターゲット、ポジショニング、コンセプトの設定
③マーケティングミックスの策定
④消費対応、競争対応、取引対応、組織対応の検討
⑤実行と再点検


2009年8月1日土曜日

流通10~変化する小売業~

百貨店

19世紀後半に欧米で誕生している。百貨店業態の革新は以下の3つ。
①商品を店頭に陳列し、値札通りの価格で販売し、現金取引をするという販売方法を採用したこと。大量生産大量販売が発達した中で、不特定多数の顧客に高回転の販売が可能になり需要と供給を結び付けた。
②商品部門別に商品を仕入れ、販売し、管理するという店舗経営の方法にある。部門性組織は、これまでにない巨大な店舗管理を可能にして、買い回り品における品揃えの広さを追求できるようにし、多くの顧客を引き付けた。
③不特定多数の消費者を魅力的な店舗や広告で吸引したこと。上流志向を持つ大衆層にたいして新たなライフスタイルを提案が行われた。

スーパーマーケットチェーン

スーパーマーケットチェーンは、今では最寄品の小売業における最も支配的な業態になっている。革新は以下の三つ。

①チェーンオペレーション
それは、一つの企業が多数の店舗を経営することであり、店舗の仕入活動や広告活動を本部に集中させることで、規模の経済性を達成できる。最寄品では、一つの店舗での商圏が限れるため、店舗レベルでは限界があるため、多数の店舗を展開し、企業レベルでの規模の経済性を追求するのである。

②セルフサービスという販売方法の導入
人件費などの費用が節約されるため、効率的に販売できた。

③販促的価格設定
これは、顧客を吸引するために、一部の商品について特別に低価格を設定して販売する方法である。消費者にインパクトを与え、店舗への吸引力を高めるこの方法はロスリーダーと言われる。

スーパーマーケットチェーンは、これら三つの革新を取り入れることで、低マージンで高回転の販売を一層進めることになる。それは、チェーンオペレーションとセルフサービスにより、コストダウンが可能になり、それに基づく低価格を販促的な価格設定で強調することで、ますます消費者を集め、その大量販売が、さらなるコストダウンを可能にするのである。

コンビニエンスストア

コンビニエンスストアが長時間営業と年中無休をベースに本格的に発展するのは、第二次世界対戦後のアメリカにおいてである。コンビニにおける革新は以下の通りだ。

①近隣の最寄立地と長時間営業、年中無休による買物の利便性を提供することである。

②POSシステムを用いた店頭の商品管理を徹底的に行うことである。

コンビニエンスストアは、比較的小規模な店舗であるために、限られた売場面積を有効に利用する必要がある。そこで、POSデータを利用して、単品ごとの販売傾向を把握して、死に筋、売れ筋と呼ばれる回転の遅い商品や速い商品の発見に努めることが行われる。すなわち、コンビニエンスストアの限られたシェルフスペースを有効に利用するために、回転の遅い商品をできるだけ早く排除する必要がある。

③多頻度少量の物流システムを導入したこと。
狭い売場面積に、多くの品目を並べるためには、品目ごとに最小限の在庫しか置けないため、多頻度少量の物流システムが必要になる。すなわち、コンビニエンスストアでは、多頻度少量の配送によって在庫の回転率を引き上げ、狭い店舗を一層有効に活用することになる。その際、物流拠点や配送車両を共用させる配送の共同化を行うことや協力的な卸売業者に仕入先を集約化させることで、多頻度少量配送を実現することになる。

通信販売

通信販売は、古くて新しい業態である。古いとは、通信販売という小売業態がすでに19世紀後半にアメリカで確立されたことに基づく。そして、新しいとは、物流や情報処理の技術革新を背景として、この業態が生まれ変わったことを意味している。ただし、通信販売には以下の制約があり、その制約を乗り越える必要がある。

①無店舗であるため、売り手が買い手を買い手が売り手の商品を見つけることが難しくなる。
②無店舗であるため、消費者は実物に触れることができず、実物情報が入手できない。

③商品の受け渡しや代金の支払いを行う場所としての店舗がないという制約かある。

このような制約を乗り越えるために、通信販売業者は、広告やダイレクトメールを大量に出し、顧客の反応を引き出し、顧客リストを作る。広告を通じて好意的イメージができれば、品質リスクを引き下げることができる。さらに、支払いのシステムに関しては、宅配業者やクレジットカード会社などの専門業者によるサービスが利用されることになる。

小売の輪仮説

小売業界の業態革新パターンを説明するために用いられるのが小売の輪仮説である。まず、小売業における新しい業態は、薄利多売(低マージン、高回転)による低価格を訴求する革新として誕生する。ところが、このように低価格で登場した新業態は、時間がたつにつれて、しだいに高マージンの高価格販売に変化することになる。それは、新業態の小売店同士の競争になれば、報復を受けやすい価格競争よりも差別化で利益をあげることが選択されるためである。
このように最初は低価格販売として参入した業態が高価格販売に移行すると、別の新しい業態が、一層の薄利多売による低価格販売を実現して市場に参入する。そして、この新しい業態もやがて高価格販売にシフトするために、また新しい低価格販売の業態が生まれるというのである。このように、業態革新は、輪のように回り続けるというのが小売の輪仮説である。

真空地帯仮説

小売の輪仮説では、低価格で参入するコストリーダー型の業態革新のみが想定されているが、業態革新には、高価格、高サービスによる差別化型の業態革新もあり、両方の業態革新が発生するメカニズムを説明しようとしたのが真空地帯仮説である。
これは、小売業者が低い価格を設定しようとすれば、消費者へのサービス水準を引き下げなければならず、消費者に高いサービスを提供しようとすれば、高価格にならざるを得ないという想定で考える。そして新しい業態による参入は、低価格、低サービスの市場と高価格、高サービスの市場という両極端の真空地帯において発生するというのである。

問題点

①異なる小売市場
両仮説では、新しい業態の生成、発展プロセスを説明するものであるが、これらの新しい業態は、互いに取り扱う商品の種類が異なり、実際にあまり競合しないものも含まれる。

②業態革新の範囲
両仮説において業態革新と呼ばれているものは、現在、業態としての、まとまりを形成しているものである。それは、業態のコンセプトに関わる企業家的な革新という特徴がある。企業家が新しい業態の完結したコンセプトを考察し、店舗への投資を通じて実現した革新であり、その革新は単発的なものと想定されている。他方で業態革新とは、小売流通のプロセス革新として、もっと広い範囲の革新を考えることもできる。

③業態革新のまとまり
両仮説では、なぜ業態ごとに似た特徴を持つのか、またなぜ既存の業態の中からは革新が発生しにくいかを説明できない。


流通システムの変化

パワーとは、特定の相手の行動を統制できる能力のことで、パワー関係は、そのような統制できる関係を意味する。統制とは、自分の意思に沿った特別な行動を他者にさせることである。そして、パワー関係は、依存度、リベート、販促用の物資などのパワー資源、競争制限によって作られる。1950年以降から、メーカーが小売業者に対してパワーを持っていた。典型例として、流通系列化による統制が挙げられる。

流通系列化とは、生産者が卸売業者や小売業者との間にパワー関係を形成して、垂直統合することなく、生産者直営の販売拠点のように販売やサービスにおける協力を確保することである。生産者は、商業を利用することで、ほとんど資本を固定することなく、状況に応じて取引関係を拡大、縮小できる。また、商業者は生産者から独立しており、それは、生産者にとって好ましくない状況が生まれる恐れがある。そこで生産者は商業者を自律的に統制するのである。

しかし、消費者行動の変化、小売業社が大規模化して生産者や卸売業者による販売依存度が大きくなることで、パワー関係が形成される。小売り業者による生産者や卸売業者の統制は、生産者や卸売業者から安く商品を仕入れるために使われるだけではなく、①生産者や卸売業者の緒活動を統制する製販統合あるいは、②生産者の商品開発や生産を統制するPB開発により、生産者と流通業者の間に長期的な関係を築き、消費者のニーズに応えようとする。

①製販統合
商品の生産や物流における一連の作業を企業間で連動させて、一気痛貫の生産、流通システムを形成することであり、それにより、生産や物流の効率化を目指すものである。また、これには、2種類の活動の調整が含まれている。1つは、生産者や卸売業者に迅速で多頻度小量の配送をさせるという物流面での調整である。こうすることで、小売業者は在庫を圧縮でき、費用やリスクを削減しながら効率的な品揃え形成を目指すことになる。2つめは、生産者や卸売業者の生産活動や在庫管理を連動させることである。そのため、小売業者はPOSデータや在庫データを生産者や卸売業者に提供してかれらの供給体制を整備させるのだ。そのデータをもとに、多頻度小量の生産計画の精度を引き上げることになる。

②PB
小売業者が生産者の開発した製品を仕入れて販売するだけじゃく、商品の開発に関与し、生産委託のような形で生産活動を指揮する場合があり、その典型がPBである。目的は、①利益確保のためのPB②品揃え差別化のためのPBがある。